ヨハンナ比較文化研究所
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映画

昭和初期の新聞はこうやって作られていた。溝口健二宣伝フィルム『朝日は輝く』

 溝口健二は1929年、大阪朝日新聞社からの依頼を受けて創立50周年記念無声映画『朝日は輝く』を監督作成した。一見ドキュメンタリー風だが、実は脚本・俳優を使った宣伝用創作映画で、太秦で撮影されたモキュメンタリ―である。とはいえ大阪朝日新聞社印刷所の実写も大胆に挿入され、当時の輪転機や鋳型活字、植字工の働きぶりなど、非常に興味深い映像となっている。 残念なことに作品の大半は紛失してしまい、現存する25分ほどの無音リール画像は決して鮮明とはいえないが、貴重な映像資料として取りあげることにした。以下に紹介するのは作品の一部分で、背景音楽は弊研究所が加えたものである。

  スピード感あふれる迫力満点の画面からは、無声でもここまで魅せる溝口の底力を目の当たりにできる。1929年当時の映画製作水準はなかなか高かったのだ。また、「エイゼンシュテインを見ていたのか」と思わせるようなカメラワークもあるが、『戦艦ポチョムキン』等の作品は日本では1950年代まで封殺されていたそうだから、溝口は見ていなかったはずだ。その辺りの事情は研究者のほうが詳しいだろう。

原作:大阪朝日新聞

監督伊奈精一溝口健二

脚本木村千疋男

撮影:横田達之対島寅雄

出演者中野英治村田宏寿沢蘭子斎藤紫香

(他に土井平太郎入江たか子などの出演記録が残っているが今回抜粋した部分には登場していないと思われる)

 

 なお、この作品の今回取りあげなかった部分には、大陸に拡大していく日本の物資輸送の実写もふくまれている。日活の資料によると元作品は77分だそうで、現存しないのがまことに残念である。

 
👇溝口健二
『朝日は輝く』より抜粋👇
(モノクロ無声・背景音楽は付加)
 
昭和初期の新聞はこうやって作られていた。溝口健二監督宣伝フィルム、『朝日は輝く』。 (29 Jun 2024、13分31秒、YouTubeより。画面右下の▢で大画面になります)


『これからの人生』(1977年仏映画)忘れられた名作

 『これからの人生』(La Vie devant soi, Madam Rosa, 1977, 仏作品, Moshè Mizrahi監督)は、ロマン・ガリ(筆名エミール・アジャール)の同名小説(La Vie devant soi, 1975)の映画化。ホロコーストを生き延びた初老の女性とアラブ系少年の愛情を描き、アカデミー賞外国映画部門賞を受賞した。古い映画だが往年の大女優、シモーヌ・シニョレの圧倒的な存在感が見どころである。また、2020年にはソフィア・ローレン主演でリメイクされ、Netflixで公開されている。


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往年のシモーヌ・シニョレ。夫のイブ・モンタンと共に

 

 パリの下町を急ぎ足で歩く初老の女性。フランスパンの突き出した大きなバッグを手にアパートの狭い階段をのぼり始めるが、肥満気味で荒い息からかなり体調が悪そうである。すれ違う各階の住民から「こんにちは、マダム・ローザ」と声をかけられながら最上階にたどり着くと、小さな子供たちが駆け寄ってくる。ローザは近所の娼婦の子供たちをあずかって、生計を立てているのだ。

 

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ドキュメンタリー『NGOの敵対的乗っ取り』:ロシア内反体制を育てる西側組織の実態

 米国は他国への執拗な経済制裁や恫喝、軍事介入などで、暴力的な正体をますます露にしてきている。だが実は、NGOのネットワークを使うという目立たない方法でも、世界を好きなようにコントロールしてきたという実態は案外、見逃されがちだ。このことを扱ったロシアの新しいドキュメンタリー、『NGOの敵対的乗っ取り』(2024年1月12日公開)を今回は取りあげる。

 

 たとえばロシア連邦の場合、現存する数千のNGOのうち法務省に公式に登録されているのはわずか92団体で、他はほとんど米国政府と公的機関、もしくは米国の息のかかったNATOの傘下に作られたものである。ロシアの人権活動家の間ではおなじみのNED(全米民主主義基金)も米国政府が設立した基金で、以前はCIAが担っていた役割を引き継いでいる。法律家のイリヤ・レメスロは、NED中東やウクライナや南米の国々でカラー革命を組織してきたと指摘し、長年NEDのトップにいたカール・ガーシュマンも、「CIAがカラー革命に関与していることは秘密ではない」と認めている。

 

 同様のNGO組織は他にも、NDI(国際民主党研究所)、IRI(国際共和党研究所)、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、カーネギー国際平和基金、モスクワ・ヘルシンキ・グループ、米国自由の家(US Freedom House)など、たくさん存在する。

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『誰がカラヴァッジョを殺したのか?』(2010) BBCドキュメンタリー

 『誰がカラヴァッジョを殺したのか?』は英国で大人気の美術史研究家、アンドリュー・グレアム=ディクソン(Andrew Graham-Dixon)が、ミケランジェロ・メリジ・ダ・カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio, 1571-1610)の死の謎にせまるBBCドキュメンタリー。

 

 グレアム=ディクソンが最初に訪れるのは、カラヴァッジョ最期の場所と言われるトスカーナ州ポルト・エルコーレ(Porto Ercole, Tuscanny)の海岸。1610年7月のある日、39歳の画家は熱射病に倒れ、この砂浜のどこかで死を遂げたと言われている。だが今日にいたるまで葬儀の記録はなく、墓も記念碑もない。若くして名声を欲しいままにしていたカラヴァッジョにしては不自然である。彼は殺されたと推測する研究者も少なくない。

 実はこれをさかのぼること4年、ローマで大画家として活躍していたカラヴァッジョは殺人罪で死刑を宣告され、逃亡してしまう。殺人犯を仇討ちする場合、首は誰がどこで切り落としても合法であったため、カラヴァッジョはまだ統一されていないイタリア各国を放浪し、逃亡生活を続けた。それでも絵を描くことだけは止めなかった。いやむしろ、多くの問題作をものにしている。グレアム=ディクソンは、この壮絶な人生がカラバッジョの絵画に光と影を投影し、西洋美術史上もっとも深淵で胸に迫る精神性をそなえた作品群が生まれたのだと言う。

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『英国の貧困:なぜ何百万の英国人は無一文なのか』2023年ドキュメンタリー

 現在、英国人口の4分の1におよぶ1500万人もの人々が、貧困ライン以下の生活を強いられている。失業率は3.8%という記録的な低さであるにもかかわらず、何百万人もの人々が働く貧困層であり、日々の支払いすらできないという状態なのだ。社会保障制度は崩壊していて、福利厚生はこの10年間で50%も削られている。その結果、社会の不平等は拡大し続けて戦後最大になり、公的援助を失った弱者は文字どおり痩せ衰えて死んでいく。こうした政府の無策を受けて、国中のあちこちに相互援助のコミュニティーが出現し、市民たちが自主的に支えあうようになった。DWDeutsche Welle制作のドキュメンタリー、『英国の貧困:なぜ何百万の英国人は無一文なのか』(Poverty in Britain: Why are millions of Brits so broke、2023年7月放映)は彼らの日常にカメラを持ち込み、感情移入を避けた語り口で淡々と紹介する。スープキッチンがあちこちにでき、心ある市民が支え合って生きる姿は今日の日本とも重なり、観る者に激しく訴えかけてくる。
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David Cameron announces his resignation as Prime Minister in the wake of the UK vote on EU membership. (licensed under the United Kingdom Open Government Licence v3.0ユニバーサル・クレジットを導入したデビッド・キャメロン首相(当時)

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『非常事態シリーズ:ハイブリッド戦争』ロシア包囲網に関するドキュメンタリー

 ロシアのウクライナ特殊作戦は、第二次大戦後における最大の軍事紛争かもしれない。西側諸国はロシアに対して幾重にも制裁を重ね、国際外交や情報戦で徹底的な攻撃を展開している。そのいっぽうでキーウ政権へは何兆ドルもの軍事援助が行なわれ、世界中から傭兵が集められる。西側諸国対ロシアの「第二次冷戦」ともいえるこの争いについて、「西側は前例のない本格的なハイブリッド戦争を仕掛けてきた」とセルゲイ・ラブロフは表明した。RT(ロシア・トゥデイ)の最新ドキュメンタリー、『非常事態シリーズ:ハイブリッド戦争』(Red Alert : Hybrid Warfare, 2023年7月23日公開)は、この複合戦争の全体像にせまろうとする。


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ヴィクトリア・ヌーランドとペトロ・ポロシェンコ 

 

 退役米国海軍大佐で元ヴァージニア州上院議員でもあるリチャード・ブラックは、ヘリコプター操縦士としてヴェトナム戦争を経験した。軍人としての32年の経験と、政治家として20年の経験があるブラックは、対ロシア戦争が長年準備されてきた敵対政策の帰結だという。「これは正にハイブリッド戦争で、ウクライナは間違った方向に誘導されてきた」。では、ハイブリッド戦争とはどのようなものなのか。

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ドキュメンタリー『戦車は腎臓のために:ウクライナにおける臓器移植闇市場』

 今回も前回に引き続いてRTドキュメンタリー・チャンネルから、5月24日に公開された『戦車は腎臓のために:ウクライナにおける臓器移植闇市場』(Tanks for kidneys. "Black transplantology" in Ukraine)を紹介する。

 

 2021年12月16日、ウクライナ国会は5831号修正案(注1)を採択した。これは子供を含むウクライナ人の死後臓器移植を、家族の同意なしに行なえることを規定したものである。特別なクリニックを介したら、臓器を国外に売ることもできる。さらに2022年4月14日、5610号修正案(注2)が採択された。これによって臓器移植に関わる付加価値税が免除され、ウクライナ人の臓器を海外に輸出することが合法になった。軍事作戦のさ中に施行された上記法案によって、死者の臓器を親族の同意なしに取り出すことが可能になり、豊富に存在する臓器が医師や葬儀屋の承諾だけで摘出されるようになった。国内の病院や刑務所をはじめ、軍組織や孤児院などからも臓器は自由に提供される。

 

(注1)Amendments to Ukraine Laws Regulating Transplantation of Anatomical Materials to Humans

(注2)Amendments to Ukraine’s Criminal Procedure Code to Improve Enforcement of Tasks in Criminal Preoceedings

 

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『ベルリンからマイダンまで:80年をふり返る』最新ドキュメンタリー

 今回は、RTドキュメンタリー・チャンネルで5月8日に放映されたばかりの作品、『ベルリンからマイダンまで:80年を振り返る』(From Berlin to Maidan : 80 years on — is Nazism gaining notoriety in Ukraine?)を紹介する。史上最大の犠牲者を出したといわれる大祖国戦争(独ソ戦)は、ドンバスでも戦われた。80年後の今日、その地で歴史をふり返りながら生きる人々に取材し、過去と現在を比較考察するドキュメンタリーである。


 マリウポリから100kmほど東に進み、ロシア連邦ロストフ州西端に入ると、サムベク高地戦勝記念公園(мемориал славы на Самбекских высотах)という第2次世界大戦記念公園がある。そこの巨大なモニュメントの前に静かに立つのは、ミウス戦線調査協会会長で歴史学者でもあるアンドレイ・クドゥリャコフ。「大祖国戦争の兵士たちは皆、ここに眠るべきなのに、名前が確認できている者が非常に少ないのは残念だ。でも私はそのひとりひとりについて語ることができる。自分で掘りおこしたからね」。大きな大理石の墓標の下には、80年前にこの地域で戦死した兵士たちの遺骨が埋葬されているのだが、まだ数千人の骨が発掘されておらず、地道な作業が続いている。
(注:文中の小見出しは筆者がつけたもので、ドキュメンタリー映画の中にはない)

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サムベク高地戦勝記念公園(мемориал славы на Самбекских высотах)


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「ロシア文化殺しの思想」を問う最新ドキュメンタリー、『対ロシア・キャンセル・カルチャー』

 20222月にロシアが特殊作戦を開始して以来、ロシアの文学や音楽を排除するおろかな動きがまたたく間に西側世界に広がった。ナチス・ドイツがユダヤ系の音楽家や文学者を否定したのと全く同じ論理を、熱病にかかったかのように実践する人々に囲まれて暮らすのは、たいへん恐ろしいことである。だが、この子供じみたルソフォビア現象を、当のロシア人はどう体験し、どのように解釈しているのだろうか。その辺の事情を当事者たちに取材した短編ドキュメンタリー、『ロシア文化殺し』㊟がオンライン公開されているので紹介したい。

㊟映画はロシア語版と英語版の2種類が公開されていて、それぞれのタイトルはКультура отмены РоссииKilling Russian Culture。ロシア語から直訳すると「ロシア文化の排斥(キャンセル)」、英語からだと「ロシア文化を殺すこと」になる。オンライン公開はロシア語版が2022年53日、英語版は同52日。上映時間は 2733秒。


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ドキュメンタリー『台無しのヨーロッパ:裏目に出たロシア制裁』

 ロシア・トゥデイ制作の最新ドキュメンタリー、『台無しのヨーロッパ』*Евросоюз: в петле санкцийEurope Undone2023125日公開)は、ロシアに対する制裁が関係国の人々にどんな影響を与えているかを取材した、30分足らずの短編ドキュメンタリーである。制裁の失敗が深刻な人災になっている様子が鑑賞できるので、紹介する。


*ロシア語原題(Евросоюз: в петле санкций) は日本語にすると『欧州連合:制裁ループの中で』


 「私たちの繁栄はロシアからの安いエネルギーで成り立っている」。冒頭、欧州連合外務安全保障政策高官代表ジョゼップ・ボレルの発言である。この前提条件がウクライナ紛争で吹っ飛んでしまった。だから政治家たちは、強気で勝負に挑まなくてはならない。「都会でも地方でも大衆の不満には対処する」。「大丈夫だ、ロシアのガスを安い価格でまた購入できるから。プーチンも望んでいることだしね」、と議会で発言するのはオランダ首相のマーク・ルッテ。だが現実はそう上手くはいってない。市民はルッテの等身大の立て看板に生卵を投げつけて、怒りを露わにしている。

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ドキュメンタリー『ドンバスの子供たち:砲火の下で育つこと』(2022)

 『ドンバスの子供たち』(Донбасс. Дети、Children of Donbass : Growing up under Ukrainian artillery fire)は今年9月に放映され、今はロシア語版と英語版がインターネット上で公開されている。非常に辛いドキュメンタリーだが、ひとりでも多くの人に観てもらいたいので、紹介する。


 この8年間、ドンバスでは毎日、ウクライナからの砲撃で子供たちが命の危険にさらされている。まだ小学生ぐらいの子供たちが次々と証言する:「ウクライナ人が私たちを撃ってくるの。私は足を撃たれたわ。跡が残ってる」、「僕たちは我慢したり死んだりしたんだけれど、彼らは勝つまで止めないんだ」、「毎日、バンバンバンって。とにかく大きなバン、バン!」。遊んでいる子供たちをめがけて砲弾が降ってくるのだ。この恐ろしい状態に慣れてしまった子供たちは爆撃音を聞き分けて、「今度はあまり遠くないな」、などと距離を判断する。そして地下室に逃げ込む。

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『冷戦:マーシャル・プラン』(1998) CNNドキュメンタリー

 第二次世界大戦が終わり、ヨーロッパは貧困にあえいでいた。失業と空腹に苦しむ庶民の多くは、「社会正義を実現するには共産主義しかない」と考えるようになり、共産党員は200万人にふくれ上がっていった。これに恐れをいだいた米国は1947年、大胆な対抗策を講じる。マーシャル・プランである。今回紹介するドキュメンタリーは、冷戦期の欧州経済復興と米国の政策を振り返って分析するもので、CNNが1998年から翌年にかけて放映した24回TVシリーズ、『冷戦』の第3回目にあたる。

 

 欧州諸国のなかでも、戦後も共産党と中道右派との間で内戦が続くギリシアの荒廃は深刻だった。英米は中道右派を経済援助していたのだが、英国は自国の経済が怪しくなったため、支援から撤退せざるを得なくなった。ギリシアからドミノ倒しで欧州諸国が共産化してしまうことを恐れ米国大統領、ハリー・トルーマンは1947年2月、非常に大胆な政策を連邦議会で発表する。いわゆるトルーマン・ドクトリンである。「自由世界の人々は、その自由を維持するために我々の支援を必要としている。もし我々が主導することをためらえば、世界の平和を危険にさらすことになり、また、我が国の繁栄をも危険にさらすことになるのである。従って私は連邦議会に、ギリシアとトルコに1948年6月30日までの期間、4億ドルの援助を提供することを要請する」。こうして、自由対独裁、西側対共産主義の闘いという二項対立が初めて登場した。

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ジョージ・マーシャル

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『苦悶のウクライナ:隠された戦争』(2015)ドイツ人ジャーナリストの見たドンバス

  「このドキュメンタリー(Ukrainian Agony:The concealed war)はドイツ人ジャーナリストの個人的経験によるものであり、彼の身に起こった出来事を反映している。ほとんどの映像は2014年7月以降に撮影されたものである......時は2014年9月4日、午後9時12分。場所は南東ウクライナ、ロシア国境から13マイル」という白い字幕が真っ黒な画面に映し出される。全く視覚の効かない暗闇から、激しいマシンガンの銃撃音が聞こえてくる。弾丸の飛びかう鋭い音が耳元で響く中、戦闘員がロシア語で叫び合っている。そして、「暗すぎて見えないな」というドイツ語の低いつぶやき。暗闇での死の恐怖を音だけで感じさせる映画の導入部だ。

 

 監督のマーク・バータルマイ(Mark Bartalmai)は、それまでも戦場を取材してきたジャーナリストだが、あの夜ほど身の危険を感じたことはない。気が付いたら彼のクルーは最前線にいたのだ。兵士運搬用装甲車から振り落とされそうになったバータルマイは、カメラを両手にかかえて飛び降りる。200メートルほど先に、炎が巨大な壁になっているのが見えた。


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ドネツク国際空港の廃墟

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『Z』(1969)コスタ・ガブラス監督のアカデミー賞受賞作品

 1963年5月、軍縮とNATOからの撤退を呼びかけるギリシアの左派政治家、グリゴリス・ランブラキス(1912-1963)がテッサロニキで暗殺され、民衆の怒りは大きな抗議行動につながっていった。『Z』(1969年:アルジェリアとフランスの合作)はこの事件のドラマ映画化で、アカデミー賞を2部門で獲得している。日本でもすぐに公開され、その後しばらくはあちこちの名画座で繰返し上映されていたのだが、今ではすっかり忘れ去られてしまったようである。なお、タイトルの「Z」はギリシア語の”Ζει”、「彼は生きている」を意味し、ギリシア民衆の抵抗運動を象徴する標語にもなっている。

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監督のコスタ・ガブラス

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ドキュメンタリー『鎖の重さ』NATOがユーゴスラビアを空爆したひどい話

 今、ウクライナ=ロシア間の戦争のひとつの原因になっているドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国は、2014年に独立を宣言したものの、西側諸国からは未だに承認されていない。ところが過去にはウクライナの近隣で、独立宣言が米英欧諸国から即座に承認された小国がいくつかある。1991年から1992年にかけて旧ユーゴスラビア領から独立した国々である。これら小国の独立は、1999年のNATO軍による空爆につながっていった。この過程を説明してくれるドキュメンタリー、『鎖の重さ』(2011、The Weight of Chains)を今回は紹介する。

 

 1980年代、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国(以下、SFRJ)のGDP成長率は6.1%で、生活水準はまずまず良かった。医療と教育はタダだし働く権利や公共交通の他、住宅も保障され、識字率は90%に達し、平均寿命は72歳だ。経済体制は、労働者協同組合自主管理による公的所有と個人企業の混合という独自の社会主義経済モデルを形成し、西欧諸国より高い成長率を示したため、市場社会主義の成功例と見なされ、国民の満足度も高かった。「ユーゴスラビアは独立のシンボルだ。この国はすべての国民にあらゆるものを提供できる。ユーゴスラビアは急速に発展し変化している。すべての人々のための自主管理社会だ」、等々。
Novi Sad Oil

1999年、NATOの爆撃を受けるユーゴスラビアのノヴィサド製油所Attribution-ShareAlike 3.0 Unported (CC BY-SA 3.0)

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『ウクライナのファシストがなぜ問題なのか』今さら訊けないウクライナ・ネオナチの起源を専門の歴史学者が徹底的に解説

 レバノン出身のジャーナリストであるラニア・キャレク(Rania Khalek)が、ドイツ出身で現在はイスタンブールの大学で教鞭をとっている歴史学者、タリク・シリル・アマー(Tarik Cyril Amar)にインタビュー。4月6日に公開された録画では、ウクライナの極右について、その起源から現在までをソヴィエトやロシア、ドイツとの関わりも含めてかみ砕いて説明してくれる。あいにく要約を書く時間がないので、とりあえず動画だけを紹介したい。英語で1時間44分と少し長いが非常に面白い内容で、飽きずに見ることができる。動画の下に目次の日本語訳を添える。なお、Youtubeの自動字幕はあまり正確でない。


The Origins of Ukraine’s Fascists & Why It Matters, w/ Historian Tarik Cyril Amar (Youtubeより。画面右下の▢で大画面になります)

 

0:00 イントロ

2:48 ウクライナ右翼民族主義の起源

5:03 ソヴィエト時代のウクライナ

8:32 第2次大戦におけるウクライナ人のナチとの協力

14:27 ソヴィエト崩壊後のウクライナ

16:43 ソヴィエト後の右翼民族主義と歴史修正主義

21:23 ウクライナ極右の役割

27:50 米国はウクライナのネオナチを武装化しているか

33:44 アゾフ部隊の軍への浸透

38:21 メディアがナチを洗脳

49:48 2014年クーデターが極右台頭に貢献

58:30 極右のゼレンスキーへの脅し

1:06:26 グローバルな極右にとっては恩恵

1:11:07 ロシアを裏切ったNATOの約束

1:19:55 プーチンに代案はあったか?

1:25:46 さらに軍備増強したドイツと欧州の脅威

1:39:51 Tarik Cyril Amar博士についてもっと知りたい人は

 

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『ムーラー:ある裁判の解剖学』ナチス犯罪を裁く困難を描いたオーストリア映画

 1963年、オーストリア第2の都市であるグラーツで、あるナチス犯罪人に対する裁判が始まった。被告の名はフランツ・ムーラー、元オーストリア・ナチス親衛隊曹長である。彼はナチス・ドイツ占領下のリトアニアにおいて、ヴィリニュス・ゲットーのユダヤ人を多数殺害し、「ヴィルナの屠殺人」と呼ばれた(ヴィルナはヴィリニュスのドイツ語読み。ここでは以下、ヴィルナ表記に統一する)。ヴィルナに住んでいた8万人のユダヤ人の中で、戦後まで生き延びることができたのはわずか600人である。

 

 ナチス政権が崩壊した後の1947年、オーストリア南部の村に隠れ住んでいたところを発見されたムーラーは、当時リトアニアを統括していたソヴィエトの裁判でソヴィエト市民殺害の罪により有罪になり、25年の苦役に服役していた。ところが1955年、オーストリア国家条約の締結で捕虜を釈放することになったため、ムーラーも解放された。この時、オーストリア政府は国外での収監1年を国内での5年に換算し、ムーラーは刑期を終えたことになった。

 

 いっぽう当時、アイヒマンの行方を探していたサイモン・ヴィーゼンタールは、オーストリアの農場にそれらしい人物が偽名で暮らしているという情報を得る。調査した結果、それはフランツ・ムーラーだった。こうして、グラーツに証人を集めてのムーラー裁判が始まった。

Paneriai monument 3
upyernoz from Haverford, USA, CC BY 2.0,
via Wikimedia Commons
ポナリーのユダヤ人犠牲者の碑続きを読む

亀井文夫『日本の悲劇』(1946):GHQに没収されたニュースリール満載ドキュメンタリー

 亀井文夫は面白い人物で、戦中は強い反戦思想に基づいて映画を制作していたわけではない。もちろんそんな事はできるはずもなかったのだが、その代わりに割とまじめに国策協力映画を作ろうとした。おそらく当時の知識人の大半がそうだったように、「こんな戦争はだめだ」と内心では思いながらも大戦景気にあやかり、時代に飲み込まれながら何とかうまく生きる道を選んだのだろう。著書『たたかう映画』(1989)を読むかぎり、ドキュメンタリーにおける方法論も今日的観点からは必ずしも肯定できるものではないし、それでも人間としての最後の一線は越えないようギリギリの映画作りをしていた様子が、文脈からうかがえる。

 だが、作品には本音が出る。結局、戦意高揚のために制作したはずの『戦ふ兵隊』(1939)は、内務省の検閲で上映不許可になり、果ては投獄されてしまう。戦後には、晴れてものが言えるとばかりに『日本の悲劇』(1946)を制作するが、今度はGHQによって没収される。踏んだり蹴ったりである。亀井文夫とは、統治者が誰に替わろうとも都合の悪い映画しか作れない監督なのだ。

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亀井文夫(1908-1987)

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『対中国戦争』(2016)米国による中国包囲網としての沖縄米軍を考えるドキュメンタリー

 ジョン・ピルジャー監督(John Pilger)の2016年作品、『対中国戦争』(The Coming War on China)は、中国包囲を念頭に東アジア各国に軍を配置する米国の戦略について、現地住民の立場から検証するドキュメンタリーである。沖縄にも取材し、辺野古の島袋文子氏や彫刻家の金城実氏などがカメラに収められている。取材は日本にとどまらず、核被爆したビキニ諸島の住民や、海軍基地に反対する済州島の人々など、広範囲におよぶ。内容は2016年時点で公開された作品として見てほしい。

 

(1)プロローグ

 

 BBCCNNを始め、あらゆるニュースが南沙諸島における中国の不穏な動きを報道している。だが、「The China Mirage」の著者であるジェイムズ・ブラッドレイ(James Bradley)は主張する。「北京で一番高い建物の上から太平洋を眺めてみたらいい。米軍戦艦がたくさんいて、そのミサイルがみんな中国のほうを向いているのが見えるだろう。韓国からも米軍装備が中国のほうを向いている。日本はアメリカのげんこつを隠すグローブだしね。もし私が中国人だったら、米国の攻撃的な態度が心配になってくると思うよ」。ピルジャーの解釈はこうだ。「確かに中国は南シナ海の紛糾する島に滑走路を建設して米中の危機を煽っている。だが、脅威にさらされているのは実は中国のほうなのだという事実は、報道されない。この地図(図1)を見ればわかるように、米国のミサイルや爆撃機や戦艦が、オーストラリアからアジア・太平洋の全域にわたって、投げ縄のように中国を取り囲んでいる」。
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(図1)米軍による中国包囲網(映画からのスクリーンショット)

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ドキュメンタリー『ボテロ』(2018):ふくよかな肖像に込められた芸術家の豊かな人間性

 ふくよかな『モナ・リザ』や、ダイナミックでユーモラスな彫刻群で知られるフェルナンド・ボテロ・アングーロ (Fernando Botero Angulo)は1932年、コロンビア第2の都市であるメデジンに生まれた。今回紹介するドキュメンタリー、『ボテロ』(2018、監督はDon Millar)では、この一風変わった作家の創作の秘密が、ボテロ本人の言葉で語られる。1時間24分の上映時間中、かなり多くの絵画や彫刻が画面いっぱいの迫力で紹介される楽しい映画でもある。 Embed from Getty Images


 さて冒頭、ボテロはレストランで息子や娘と食事をしながら、自分史を語り始める。父親は行商人で、ラバの背中に品物の入った袋を積んで売り歩いていた。ある日、ボテロが兄弟と遊んでいたところ、父親が「気分がすぐれないから子供をどこかへ連れて行ってくれ」と母親に命じる。そしてボテロたちが隣人の家に行ったわずか30分後、父親は亡くなってしまった。4歳のボテロにはわけが分からない。あとに残された母親は、縫製の仕事をしながら3人の子供を育てた。もちろん貧しい。そんな少年ボテロが初めて絵を売ったのは、闘牛の切符売り場である。店主に小さな水彩画を数点見せたところ、陳列ケースに飾ってくれた。小さなボテロは毎日店の前に行って自分の絵の数を数えた。そして初めて売れたとき、2ペソをもらった。少年は描き続け、真剣に絵と向き合うようになる。

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【ウィシュマさん国賠名古屋地裁第2号法廷】
12月から医師等4名証人尋問
■2025年
12月04日(木)14:30~
12月11日(木)14:30~
12月24日(水)10:30~
■2026年
1月14日(水)10:30~
1月28日(水)10:30~
 **************

※対ロシアが上手くいかなくて踵をかえしてベネズエラ。これも事実上失敗で今度はイラン。精神鑑定と24時間カウンセリングが必要な深刻な症状だと思う。

※なるほど。80年前は「現人神」に命を捧げた幼稚な民族が今度は「真のお母様」に骨までしゃぶられたってことか。

※誰かネタニヤフのことを「凡庸な悪」と言う人いる?

※原爆を落とさなくても日本は降伏していたが戦後史も変わっていただろう。まず無条件降伏までの日程が延びてソ連軍が北海道を制圧し場合によっては南進する。戦後処理は日本のどこかで南北にぶった切ってドイツのように分割する形で終結した可能性が高い。その場合、朝鮮半島の分断という悲劇はひょっとしたら免れたかもしれない。どちらにしろ日本はこの戦争で近隣諸国に多大な迷惑をかけた。《続編》もちろんそれでも原爆は落とさない方が良かったに決まっている。我が国は日本連邦共和国と日本民主主義人民共和国の二つに分かれただけだから。バラライカ弾いてカチューシャを歌って結構楽しく暮らせたと思う。

画像は西鶴一代女(1952年東宝:溝口健二監督)のスチールに自動着色+手修正

日独韓伊の米軍基地

《国会オンライン中継録画》
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戦争の彼方
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当研究所制作の美術書

10月1日発売開始
2026年カレンダー:読書の風景¥550(税込)

ミケランジェロ素描集
¥1650(税込)


テオドール・ジェリコーの習作
¥1650(税込)


モーティマー・メンペス作品選Ⅱ:ブルターニュ
¥1210(税込)


モーティマー・メンペス作品選:日本と世界と戦争と
¥2530(税込)


ドラクロワ素描集
¥1100(税込)


本を読む
ジャカルタ・メソッド : 反共産主義十字軍と世界をつくりかえた虐殺作戦(ヴィンセント・ベヴィンス著)

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