ヨハンナ比較文化研究所
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ドイツ・オーストリア

『ハーケンクロイツの下のクラシック』:過酷な運命を生きぬいたチェリストのドキュメンタリー

 2022年DW(ドイチェ・ヴェレ)制作のドキュメンタリー、『ハーケンクロイツの下のクラシック』(Klassik unterm Hakenkreuz/Music under the Swastika, a.k.a. Music in Nazi Germany)は、「どうしてドイツ中の音楽家が一夜にしてナチスの協力者に変質することができたのだろうか」、という問いへの答えを生き証人との対話から導き出そうと試みる静かな作品である。

 

 ナチスが台頭し始めた時代にクラシック音楽界の頂点にいた指揮者に、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(Wilhelm Furtwängler)がいる。1886年ベルリン生まれのヴィルヘルムは天才肌で、20歳ですでに交響楽団の指揮をしていた。当時のドイツではクラシック音楽のみならず、ジャズや現代音楽なども豊かに花咲いていたのだが、国民社会主義が権力を握った1933年以降、状況がまったく変わってしまった。ヒトラーは「国民音楽」なるものを打ち出し、「音楽が情緒および感性の形成に非常に大きな力を持つことは疑いのないことである。だが音楽は我々を感動させても、知的満足には程遠い」と述べ、音楽の選別粛清を始めた。街頭でもコンサートホールでも暴力をともなう規制が行なわれたため、多くの音楽家は早々にドイツを去っていった。


Furtwängler
Wilhelm Furtwängler

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続、ハンナ・アーレントってどうよ?ヤコブ・ロゾウィックの批判書、『ヒトラーの官僚たち:ナチ秘密警察と凡庸な悪』

 ヤコブ・ロゾウィック(Yaacov Lozowick)は著書、『ヒトラーの官僚たち:ナチ秘密警察と凡庸な悪』(2000で、「アドルフ・アイヒマンはハンナ・アーレントが指摘したように無自覚な官僚だったのか」、ということを歴史学者の立場から検証した(注)。ナチス・ドイツにおけるアイヒマンの役割を分析したもので、文体も簡潔で、専門書というよりはむしろ一般の読者を想定した良書である。だが、アーレントを真向から批判したためか、評論家たちからはほとんど無視されてしまった。映画『肯定と否定』で注目を浴びた歴史学者、デボラ・リップシュタッツもその著書、『アイヒマン裁判』(2011、The Eichmann Trial)でアーレントを批判したが、こちらはそれが中心テーマではなかったため、多くの批評家たちはそこに深入りせずに論評した。そんな事情を考えながら、ロゾヴィックが解体したアイヒマンについて考えてみる。 

(注)Yaacov Lozowick, Hitler’s Bürokraten: Eichmann, seine willigen Vollstrecker und die Banalität des Bösen、2000。英語版は Hitler's Bureaucrats: The Nazi Security Police and the Banality of Evil

ヤコブ・ロゾウィックはドイツ生まれの歴史家。イスラエル国立公文書館で公文書研究の責任者を務めた。

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『ウテ・ボックの狂った世界』(2010)ウィーンで難民の側に立つ

 ウテ・ボック(Ute Bock、1942-2018)は生涯にわたって難民を助け続けた稀有な女性である。元々ボックはウィーンの青年保護センターで教育者として働いていた。だが、周囲に多くの外国人が集まるようになり、いつしか難民に対する人道的援助に携わるようになる。さらに数々の制約に対処するため、『難民プロジェクト:ウテ・ボック』というNGO団体を設立。以来、難民が住める共同体を自費で運営し、駆け込んでくる難民に住居や食料を与えるのみならず、法的援助も行なった。100部屋を有する彼女のアパートには350人の難民が寝泊りし、1000人のホームレスが宛先住所として登録していた。NGOの資金は「Bock auf Bier」(「ビールが欲しい」ぐらいの意味。Bock Beerというビールの名前にかけている)という、ビールの代金の一部が寄付されるキャンペーンで支えられた。NGOの活動はボック亡き後も続いている。

 

 映画、『ウテ・ボックの狂った世界』(Die verrückte Welt der Ute Bock、2010、監督はフッシャング・アッラフヤリ、Houchang Allahyari)はドキュメンタリーではない。かと言って、ドラマでもない。実在の人物や起こった事件を本人や関係者たちに再現させるが、その場面にカール・マルコヴィクスなどプロの役者も登場する。つまり、現実と虚構の境を越えた映画作りとなっている。

1024px-Bock_for_President,_Audimax,_31.10.2009_(4)Houchang Allahyari (l.) mit Ute Bock und seinem Sohn Tom-Dariusch Allahyari bei der Vorpremiere von Bock for President (Viennale 2009)

 Attribution-ShareAlike 3.0 Unported (CC BY-SA 3.0)

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『ムーラー:ある裁判の解剖学』ナチス犯罪を裁く困難を描いたオーストリア映画

 1963年、オーストリア第2の都市であるグラーツで、あるナチス犯罪人に対する裁判が始まった。被告の名はフランツ・ムーラー、元オーストリア・ナチス親衛隊曹長である。彼はナチス・ドイツ占領下のリトアニアにおいて、ヴィリニュス・ゲットーのユダヤ人を多数殺害し、「ヴィルナの屠殺人」と呼ばれた(ヴィルナはヴィリニュスのドイツ語読み。ここでは以下、ヴィルナ表記に統一する)。ヴィルナに住んでいた8万人のユダヤ人の中で、戦後まで生き延びることができたのはわずか600人である。

 

 ナチス政権が崩壊した後の1947年、オーストリア南部の村に隠れ住んでいたところを発見されたムーラーは、当時リトアニアを統括していたソヴィエトの裁判でソヴィエト市民殺害の罪により有罪になり、25年の苦役に服役していた。ところが1955年、オーストリア国家条約の締結で捕虜を釈放することになったため、ムーラーも解放された。この時、オーストリア政府は国外での収監1年を国内での5年に換算し、ムーラーは刑期を終えたことになった。

 

 いっぽう当時、アイヒマンの行方を探していたサイモン・ヴィーゼンタールは、オーストリアの農場にそれらしい人物が偽名で暮らしているという情報を得る。調査した結果、それはフランツ・ムーラーだった。こうして、グラーツに証人を集めてのムーラー裁判が始まった。

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upyernoz from Haverford, USA, CC BY 2.0,
via Wikimedia Commons
ポナリーのユダヤ人犠牲者の碑続きを読む

『ヴェーグルの奇跡』(2018)シルヴィオ・ゲゼルの自由貨幣を実際に流通させた町の物語

 大恐慌時代の1932年、「時間とともに減価する自由貨幣」を流通させ、経済を立て直したオーストリアのヴェーグルという町の実話が、『ヴェーグルの奇跡』(2018年)というタイトルでドラマ映画化された。演じるのは『8月の霧』や『ヒトラーの贋札』でおなじみのカール・マルコヴィクス(注1)。


(注1)カール・マルコヴィクスは、ウィーンを舞台にした90年代のテレビドラマ、『警察犬レックス』で犬嫌いの脇役をユーモラスに演じ、世界中の人気者になった。その後、数多くの劇場映画やテレビドラマに次々と登場し、その味わい深い演技が高い評価を得ている。悲劇的な史実に基づいた映画、『8月の霧』(当ブログで2017年に紹介)では、主人公の父親を演じている。 


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ヴェーグルで使われた労働金券。毎月スタンプを貼る

 オーストリアとドイツの国境に近いヴェーグルは、もともと鉄道の交差する町として発達してきた。だが1932年には大恐慌のあおりで、5000人足らずの住民のうち1500人近くが失業してしまい、ナチスが失業者相手に盛んにビラを配るような状態になっていた。税収も激減して窮地に陥ったヴェーグル町議会は、オーストリア社会民主党員で列車運転手のミヒャエル・ウンターグッゲンバーガーを、新しい町長に選出する。ミヒャエルが以前に本で読んだことのある理論上の通貨、「自由貨幣」を流通させてみてはどうか、と提案したのが採択されたのだ。貨幣そのものの価値が時間とともに減少する仕組みにすれば、貯蓄しても意味をなさず、流通に回るという理論にもとづく貨幣だ。だが、勝手に造幣するのは重罪である。結局、「労働金券」(Arbeitswertscheine) という貨幣のようで貨幣ではないものを作成しよう、ということになる。そして、町民を巻き込んだ実験が始まった。

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新ドキュメンタリー『アイヒマンと共犯者』ドイツ第1テレビで放映中

 ミュンヘンの市立公文書館にカメラが入る。そこにはナチスドイツにおける大量殺人犯で、アイヒマンの共犯者でもあるフランツ・ヨゼフ・フーバー(Franz Joseph Huber)の名前が記録されている。だがこの人物についての詳細は、戦後史からほぼ抹殺されてきた。番組のナレーターは、「この報告はあまりにも衝撃的なので、私たちはひとつの番組にすることにしました。過去の収容所の責任者が戦後、私たちの街でその正体をあばかれることなく普通に暮らしていたのです」、と紹介している。

 

 アイヒマンがエルサレムで公開裁判の後に処刑されたのと対照的に、フーバーは戦後もミュンヘンで罪に問われることなく、実名で普通に暮らし、生涯を終えた。これは、なぜそのようなことが起きたのかを追う最新のドキュメンタリーである。『Eichmann und sein geheimer Komplize』というタイトルで、4月7日よりARDのインターネット・サイトで放映されている。

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フリッツ・バウアー:自国の過去の犯罪を裁き続けた検事

 フリッツ・バウアーといえば、アイヒマンを追い詰めた男というイメージがどうしても先行する。だが、彼が検事として成し遂げた偉業はもっと広範にわたる。まず、野放しになっていたナチスの残党を法廷に引きずり出し、アウシュビッツ裁判によってホロコーストの実態を国民に知らしめ、若い世代に働きかけて人間としての正しい道を指し示した。この優れたユダヤ系ドイツ人についてはドラマ映画、ドキュメンタリーともに複数本あるが、その中からキャサリン・バーンスタイン監督の最新ドキュメンタリー、『フリッツ・バウアー:ナチズム vs. 検事』(注1)を取り上げる。

 この作品は2018年にフランスで制作された。フランス語の原題は”Fritz Bauer : un procureur contre le nazisme”だが、ドイツ語版のタイトルは”Fritz bauer : Generalstaatanwalt. Nazi-Jäger” 。バプティステ・ティリ(Baptiste Thiry)のテーマ音楽が印象的で、音楽だけの市販もされている。

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ドイツ映画『前進あるのみ!』(2017):ホーネッカーをおちょくったドタバタ喜劇

 今から31年前、1989年のちょうど今ごろ、東ドイツは大揺れに揺れていた。ハンガリー国境から西側に脱出する市民は後を絶たず、ライプチヒの月曜デモは天安門事件に触発されたこともあって、参加者が増え続けていた。この動きを封じ込めるため、東ドイツ国家評議会議長のエーリッヒ・ホーネッカー(1912-1994)は軍隊を出動させ、群衆に銃を向けようとする。本来はかなり重たい歴史上の事件なのだが、喜劇映画『前進あるのみ!』(Vorwärts immer!、2017)では偽ホーネッカーが登場し、デモに参加した娘を助けるためにシュタージや政府の要人をふりまわしたあげく、ついには軍隊を止めてしまう。偽ホーネッカーを演じるヨルグ・シュッタウフ(Jörg Schüttauf)の渾身の演技、特に言い回しが面白く、脇役の偽エゴン・クレンツもかなり笑える。そしてかわいい娘とその仲間、登場する間抜けなシュタージのドタバタは、安心して鑑賞できるお茶の間喜劇風に仕上がっており、日本にいながらドイツ人のお笑いをおおいに楽しめる。


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エーリッヒ・ホーネッカー(後ろはヴァルター・ウルブリヒト Bundesarchiv, Bild 183-57000-0512 / Zühlsdorf / CC-BY-SA 3.0 / CC BY-SA 3.0 DE https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/de/deed.en)
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『不思議な東京』ドイツ第1テレビで放映中

 2021年にオリンピックが開催される予定になっている都市ということで、ドイツ第1テレビ(ARD1)が東京の特集番組を組んだ。明らかに新型コロナウイルス流行前後の映像が混在しているが、都民の暮らしを非常によく取材し、美しいカメラワークにおさめている。
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ドイツ映画『コリーニ事件』イタリア人容疑者の謎にせまるダイナミックな法廷劇

 ドイツ映画『コリーニ事件』(2019年)は、ナチスの犯罪に関する時効問題をあつかったフェルディナンド・フォン・シーラッハの同名ベストセラー小説(2011年)の映画化だ。主役のカスパー・ライネンを演じるのは、エリヤス・エムバレク(Elyas M’Barek)。トルコ系の若手弁護士という設定を、魅力的に演じている。そして冒頭のシーンで、澄みきった青い空のような目のアップを見せてくれるのが、往年のマカロニ・ウエスタン俳優、フランコ・ネロである。なかなかいい年寄りになっている。

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Franco Nero, 36th Fajr International Film Festival. 20 April 2018

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『血と栄光:ヒトラー支配下の青春』(1982) 暗い時代のドイツ人一般家庭をえがいた米独合作教育ドラマ

 『血と栄光:ヒトラー支配下の青春』(Blut und Ehre: Jugend unter Hitler, Blood and Honor: Youth under Hitler)は、ヴェルサイユ体制下ドイツの青少年が、どのようにしてナチス信奉者になっていったのかを戦後の若者に知ってもらうため、アメリカとドイツのスタッフが協力して制作したテレビ向け教育ドラマである。1933年から1939年までの間にヒトラー・ユーゲントに参加し、蛮行を引き受けていく青少年たちの姿が克明に描かれている。脚本は、実際にヒトラー・ユーゲントを体験したヘルムート・キッセル(Helmut Kissel)。米独両国のテレビで放映する都合上、4回シリーズのすべてが英語とドイツ語でそれぞれ2回、ドイツのバーデンバーデンで撮影された。出演者は全員、英独バイリンガルの俳優だそうだ。


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『あの頃は...ある車の物語』(1947) 廃墟となったドイツを生きた人々のドラマ

 ナチスが敗退した跡のドイツは一面、瓦礫の世界だった。だが映画製作者たちはすぐさま行動に出た。ヒトラーが倒れる以前から、戦後に制作すべき映画の構想を練っていたのだ。ヘルムート・コイトナー監督(Helmut Käutner)の『あの頃は』(In jenen Tagen)もそうした「瓦礫映画」と呼ばれる作品群のひとつである。撮影は1946年から1947年にかけてハンブルグの野外ロケのみで行なわれ、カメラは借り物、機材は闇市で入手したと記録されている。下は映画のワンシーンだが、当時のハンブルグ港付近の様子がわかる良い映像だ。

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(映画紹介のためのスクリーンショットなので解像度は落としてあります)


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『オティリエ・フォン・ファーバーカステル:ある勇敢な女性の物語』ドイツの鉛筆会社を継いだ女性のドラマ


 19世紀半ばに鉛筆を世に出した会社、ファーバーカステルで図らずも経営者になった女性、オティリエの生涯がドラマ化され、ドイツ第一放送で放映された(Ottilie von Faber-Castell - Eine mutige Frau、2019)。『ダウントンアビー』のドイツ版と評判だが、実話に基づいているだけに前者のように荒唐無稽なお嬢様礼賛エピソードのバラマキではなく、時代に抗して自立しようとした女性の物語になっているのが良い。また、オティリエを演ずる女優、クリスティン・ズッコウ(Kristin Suckowがヒラリー・スワンクに似ていて、「お、強いっ!」と感心しながら楽しめるところも良い。(上はユーチューブ上のトレイラー)

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ドキュメンタリー『ヴィリー・ブラント:ある政治家の追憶』

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 1970年12月7日、ひとりのドイツ人政治家がワルシャワ蜂起記念碑の前にひざまずく写真が、世界をかけめぐった。ナチスの時代にあってはレジスタンスとしてノルウェーに亡命し、戦後はドイツ社会民主党(SPD)から初の首相に選ばれたヴィリー・ブラントである。彼はのドイツの罪深い過去贖罪する行動によって、ノーベル平和賞を授与され。2013年にARTE(ドイツとフランスの共同放送局)で放映されたTVドキュメンタリー、『ヴィリー・ブラント:ある政治家の追憶』(“Willy Brandt: Erinnerungen an ein Politikerleben”)は、激動の時代を生き抜いた政治家のみごとではあったが内面に深い憂鬱をかかえた生涯を、知人や朋友へのインタヴューをまじえて蘇らせる。ちなみに今日、10月8日はブラントの命日でもある。


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『ハンブルグのバリケード』2017年G20における警察の過剰警備を検証するドキュメンタリー

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  ハンブルグはヨーロッパでも有数の裕福な都市である。エルベ河沿いの良港に恵まれ、歴史の刻まれた美しい街並みには都会的なファッションがあふれる。2017年、ここで開催されたG20をめぐって、市街はデモ隊と警官隊が全面衝突するという大惨事の舞台になってしまった。『ハンブルグのバリケード』(注)は、この市街戦ともいえる非常事態を、警察のとった行動に焦点を合わせて記録したドキュメンタリーである。

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ヨハンナ・アイ、ナチスから絵画を守った女性画商

 7~8年前の冬、デュッセルドルフを訪ねた。とにかく寒い日で、防寒ブーツを履いていても深々と冷える。ライン河沿いを歩きながら温かいものにありつけそうなレストランを見つけ、窓際の席に陣取った。テーブルの脇に無造作に置いてあった雑誌を手に取ると、見開きに載っているふくよかな中年女性の写真が目にとまった。ただ者ではない顔付きをしているのだ。どうも第3帝国の退廃芸術事件と関連がある人らしい。食事もそこそこに読みふけった後、ウエイトレスからボールペンを借りてペーパーナプキンに名前を書き取って店を出た。これが私とヨハンナ・アイ(Johanna Ey)との出会いである。
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『グンダーマン』(2018)シュタージのスパイだったシンガー・ソングライター

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 ゲアハルト・グンダーマン(Gerhard Gundermann, 1955-1998)は旧東ドイツで社会性の強いテーマを歌い続けた人気シンガー・ソングライターだった。ところがベルリンの壁が崩壊した後、自らが1976年から84年までシュタージのスパイであったことを認めて周囲を驚かせる。アンドレアス・ドレゼン(Andreas Dresen)監督のドイツ映画、『グンダーマン』(Gundermann, 2018年)は、体制に利用されたひとりの芸術家のぶざまな姿を、本人と容貌がそっくりな俳優アレクサンダー・シール(Alexander Scheer)を起用して再現してみせた問題作である。
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『ボルクヴァルト倒産の顛末』2019年TVドキュドラマ

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 ボルクヴァルトはドイツの地方都市、ブレーメンに拠点をおく自動車メーカーで、その斬新なデザインと思い切った技術革新は戦前から世界中の耳目を集めていた。戦後はドイツ産業復興の波にうまく乗り、フォルクスワーゲンやオペルに次ぐ第3の企業に躍り出るが、わずか数年の栄華を極めた後、1961年に倒産してしまう。一地方資本に何が起こったのか。経営者の体質、その過去、そして自由ハンザ同盟都市としてのブレーメンの政治図、競合自動車会社・BMWの計略などを今日的視点から解明し、ドキュドラマに仕立て上げた番組、"Die Affäre Borgward"が今、Das Erste(第一ドイツテレビ)で放映されている。主役のカール・ボルクヴァルトを演じるのは、あらゆるドイツ映画に顔を出す実力派、トーマス・ティーメ。番組表ではドキュメンタリー枠に入っているが、これはノンフィクションとはいえないだろう。本来は、「この物語は事実に基づいてドラマ化したものである」、という但し書きを番組の冒頭に入れるべき種類の歴史ミステリーである。それだけに非常に面白い作品にしあがっている。
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小説『ベルリンに一人死す』の5度目の映画化『ヒトラーへの285枚の葉書』はドイツでちょっと不評

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Hans Fallada

 ハンス・ファラダ(1893-1947)は、弾圧の時代にドイツに留まった数少ない著述家のひとりである。そのためにいろいろな制限を受け、妥協を余技なくされた。戦争が終結するころには精神的にもズタズタになり、1946年に小説『ベルリンに一人死す』を精神病院で脱稿した直後に他界している。(原題は”Jeder stirbt fur sich allein”で、「人はみな自分で死ぬ」という意味合いが強い。) 物語は妻の弟が戦死したことを契機に、ナチス批判のハガキをベルリン中にばら撒くという抵抗運動にのめり込んていった夫婦、オットー&エリゼ・ハンペルの実話に基づいている。だが、「子供を奪われた母が立ち上がる」というドラマのほうがより人々の胸を打つ、とファラダは考えたのだろう。基本的な設定を変更し、さらに多様な登場人物を加えることによって、時代を凝縮するみごとな小説に仕上げた。
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亡命作家の半生『シュテファン・ツヴァイク、さらばヨーロッパ(黎明を見ながら)』(一部修正済)

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 オーストリア出身のユダヤ人作家、ツヴァイクの亡命生活を描いたドラマ映画、『シュテファン・ツヴァイク、さらばヨーロッパ』(2016年作品。”Vor der Morgenroete/Stefan Zweig / Farewell to Europe”、ドイツ語原題は『朝焼けを前に』あるいは『黎明を見ながら』)はなかなか見ごたえのある佳作だ。監督は女優でもあるマリア・シュラダー。
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【ウィシュマさん国賠名古屋地裁第2号法廷】
12月から医師等4名証人尋問
■2025年
12月04日(木)14:30~
12月11日(木)14:30~
12月24日(水)10:30~
■2026年
1月14日(水)10:30~
1月28日(水)10:30~
 **************

※対ロシアが上手くいかなくて踵をかえしてベネズエラ。これも事実上失敗で今度はイラン。精神鑑定と24時間カウンセリングが必要な深刻な症状だと思う。

※なるほど。80年前は「現人神」に命を捧げた幼稚な民族が今度は「真のお母様」に骨までしゃぶられたってことか。

※誰かネタニヤフのことを「凡庸な悪」と言う人いる?

※原爆を落とさなくても日本は降伏していたが戦後史も変わっていただろう。まず無条件降伏までの日程が延びてソ連軍が北海道を制圧し場合によっては南進する。戦後処理は日本のどこかで南北にぶった切ってドイツのように分割する形で終結した可能性が高い。その場合、朝鮮半島の分断という悲劇はひょっとしたら免れたかもしれない。どちらにしろ日本はこの戦争で近隣諸国に多大な迷惑をかけた。《続編》もちろんそれでも原爆は落とさない方が良かったに決まっている。我が国は日本連邦共和国と日本民主主義人民共和国の二つに分かれただけだから。バラライカ弾いてカチューシャを歌って結構楽しく暮らせたと思う。

画像は西鶴一代女(1952年東宝:溝口健二監督)のスチールに自動着色+手修正

日独韓伊の米軍基地

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本を読む
ジャカルタ・メソッド : 反共産主義十字軍と世界をつくりかえた虐殺作戦(ヴィンセント・ベヴィンス著)

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