(画面右下の▢で大画面になります。同じく⚙マークで高画質1080pHDを選択してください。)
新刊書『ミケランジェロ素描集』(A4判カラー32頁)はこちらで購入できます。
続きを読む
テネブリズムはロウソクなど単一の光源を使い、明暗のコントラストで主題を浮かび上がらせる画法。流派や様式を分類する概念ではないが、17世紀のイタリアやオランダで多くの画家に用いられた。代表的な作家としてカラヴァッジョやレンブラントが挙げられ、他にもこの技法を駆使した画家は地域や時代をこえて散在する。
『愉快な仲間』、1623年、ヘラルト・ファン・ホントホルスト作
1992年2月17日、マリオ・キエーザというミラノの実業家が収賄の現行犯で逮捕された。いきさつはこうだ。キエーザはバギーナ(★記事末尾を参照)というケアハウスを経営していたが、地域の小さな清掃会社と契約をかわした際、社長のルカ・マンニに手数料として5%を要求する。一旦は承諾したものの、キエーザの要求額がどんどん上がっていくことに困りはてたマンニは、ミラノ地方検事のアントニオ・ディ・ピエトロに相談する。ディ・ピエトロはマンニ同意のうえ、現金の入ったブリーフケースに隠しマイクを仕掛ける。こうしてキエーザは、700万リラ(当時の日本円換算で約73万円)の賄賂を受け取った現場を押さえられた(注1)。
実はキエーザは、イタリア社会党(PSI)書記長であるベティーノ・クラクシの秘書をやっていた。当時、政治家への賄賂は広く行なわれていたため、キエーザの供述を手がかりに他の議員たちも次々と逮捕されることになる。俗に「タンジェントポリ」(汚職の街)と呼ばれたこの悪しき慣習に対する一連の摘発は、「マニ・プリーテ」(汚れてない手)と名付けられた。捜査の手はまたたく間に全国におよび、5000人が取調べを受け、500人の元国会議員が巻き込まれ、多くが逮捕されたり自殺に追い込まれたりした。判事の殺害事件も起こっている。
2004年に制作されたドキュメンタリー、『マニ・プリーテ』(Mani Pulite)では、監督のアンドレア・パムパラーナ(Andrea Pamparana)が当時を知る政治家や検事、メディア関係者などに幅広くインタビューし、キリスト教民主党やイタリア社会党が解党して第2共和政へと移行していく経過を検証しながら、その今日的意味を問う。全編に流れるヘクター・ユリシーズ・パッサレラ(Hector Ulises Passarella)のバンドネオン演奏も、なかなか心地よい。
(注1)逮捕時に使われたブリーフケースは2007年のチャリティー・オークションにかけられ、市長が5000ユーロで競り落としたという後日談がある。
続きを読む
(注1)ルイジ・コメンチーニが3年後に監督した『ブーベの恋人』は、日本でも繰り返し上映されている。
続きを読む
『都市を動かす手』(Le Mani Sulla Citta/Hands over the City)は、実際にあったナポリ市議会と不動産投資家の癒着関係を題材に、政治の腐敗が都市の姿を変えてしまう様を描いた社会派ドラマである。監督のフランチェスコ・ロージ(注1)はハリウッドの名悪役、ロッド・スタイガーを主役に抜擢し、利権と汚職にまみれた政治家をリアルに描くことに成功している。またこの作品には、本物の市議会議員が脇役やエキストラで多数出演しているという驚くべき仕掛けもある。監督がナポリ出身だったからこそできた芸当なのだろうが、なかなか食えないことをやる人だ。
「父と叔父が殺された1937年6月9日、僕は生後40日目だった」、と語るのはカルロ・ロッセッリ(1899-1937)の息子、アンドリューである。ロッセッリはファシストとペンで戦った自由社会主義提唱者で、亡命先のフランスで弟のネッロ・ロッセッリ(1900-1937)とともに惨殺された。TV映画『ロッセッリ事件:ある政権の犯罪』(Il Caso Rosselli=Un Delitto Di Regime, 2007)は、反ファシスト運動に殉じたカルロとネッロの冒険に満ちた軌跡をアンドリューとともにたどることによって、ムッソリーニとファシストの蛮行を検証し、その戦後社会への余波を見極める胸を打つドキュメンタリーである。
プリーモ・レーヴィ(Primo Levi、1919-1987)はトリノ出身のユダヤ系イタリア人化学者で、戦後はアウシュビッツからの生還者として筆をとり、記録文学を書き残した稀有な作家である。生き地獄にもがく被収容者を客観的に観察しながらも、温かい視点を失うことのないレーヴィの筆致は、読む者に人間らしさの倫理や生きることの哲学を問いかける。その貴重な作品群から、アウシュビッツ解放後の帰還の旅を述懐した『休戦』(La Tregua、1963年初版発行)が、フランチェスコ・ロージ監督によって1997年に同名映画化された。日本公開当時のタイトルは『遥かなる帰郷』になっている。忘れ去られるにはもったいない映画なので、改めて取り上げたい。
続きを読む
暗い時代の一部を切り取ったB級娯楽映画には、洋の東西を問わず掘り出し物が多い。ディーノ・リージ監督の喜劇ドラマ、『ローマ進軍』(La Marcia su Roma: 注1)も小品ながら非常に面白い映画だ。冒頭は次のようなナレーションで始まる。
「1918年11月、第一次世界大戦における勝利のテーブルについたイタリアに、新しい時代がやってきました。労働者とすべての人が喜ぶ安寧の時代が到来したのです。あ、すべての人じゃないかも...」

1922年のローマ進軍の様子



当研究所が字幕を制作したDVDはアマゾンJPで販売しています。下の画像をクリックしてください。![]() 戦争の彼方 ¥1650(税込) ![]() ウィーンへの帰還 ¥1650(税込) ![]() 赤いオーケストラ ¥1650(税込) ![]() 革命の内側¥1650(税込) |
当研究所制作の美術書![]() ![]() ¥1650(税込) ![]() ¥1650(税込) ![]() ¥1210(税込) ![]() ¥2530(税込) ![]() ドラクロワ素描集 ¥1100(税込) |