この夏は昨年に引き続いて読書に関する絵画作品をかき集め、2026年カレンダーでどれを紹介しようかとむずかしい選択をしていた。多くの画家が、さまざまな「読む」場面を、それぞれの手法でカンバスに投影している。今日は、その中でひとつのグループを形成する「読み物をする家族の図」について、少し触れてみる。

 たとえばアンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Fantin-Latour)の1877年作品、「読書」。本を読んでいるのは妻のヴィクトリア、聴いているのはその妹のシャルロットである。実は同じ題材の1870年作品があるのだが、比べてみると画面から余計な情報が捨象され、静かな画面に内面的な深みが緊張感をともなって表れているのがわかる。

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読書(1877) アンリ・ファンタン=ラトゥール

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読書(1870)アンリ・ファンタン=ラトゥール

 ファンタン=ラトゥールは、印象派全盛期のフランスでひたすら静物画を描いた変わり者で、日本美術を楽しむジャングラールの会(Société japonaise du Jinglar)会員でもあった。

 ちなみにファンタン=ラトゥールの作品9点が、マルデブルク調整センター(文化財損失調整センター、㊟1)に紛失作品として登録されている。下のデッサンは同センターで公開されている画像から引用した。
㊟1:マルデブルク調整センター(Lost Art-Datenbank, Deutsche Zentrum Kulturgutverluste) は、ナチスに略奪された美術品を発見し、登録する目的で設立されたドイツ連邦の公的機関。多くの画家の作品が検索できる。


 他にも家族を「読み物をするモデル」として描いた画家は多い。レンブラント・ファン・レインも妻に色々な装束をさせて繰返し描いているし、ヴィルヘルム・ハマースホイの室内画のモデルはほぼすべて妻である。面白いところでは、アンリ・ドゥ・トゥルーズ=ロートレックの作品。母親を描いた作品群だけは清楚で温かみを感じる画面にしあがっており、ロートレックの他の人物画とは画然とした違いがある。
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ロートレック伯爵夫人(1887)アンリ・ド・トールーズ=ロートレック

 息子をよく描いたのはカミーユ・ピサロ。「息子画」というジャンルがもしあるとすれば、安定した秀作群を展開している。
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読書する息子のロド(1893) カミーユ・ピサロ

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息子ロドの肖像(1898) カミーユ・ピサロ


 今回も「読書の風景:2026カレンダー」に関連した動画を作成し、できるだけ多くの絵画をつめ込んだ。以下に紹介するので楽しんでいただきたい。

読書の風景 2026:画家が繰り返し描いてきた静かな日常 (高画質1080pHD)

(23 Nov 2025、13分06秒。画面右下の▢で大画面になります)

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2026年カレンダー:読書の風景
ヨハンナ比較文化研究所
2025-10-01
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税込550円


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