『これからの人生』(La Vie devant soi, Madam Rosa, 1977, 仏作品, Moshè Mizrahi監督)は、ロマン・ガリ(筆名エミール・アジャール)の同名小説(La Vie devant soi, 1975)の映画化。ホロコーストを生き延びた初老の女性とアラブ系少年の愛情を描き、アカデミー賞外国映画部門賞を受賞した。古い映画だが往年の大女優、シモーヌ・シニョレの圧倒的な存在感が見どころである。また、2020年にはソフィア・ローレン主演でリメイクされ、Netflixで公開されている。


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往年のシモーヌ・シニョレ。夫のイブ・モンタンと共に

 

 パリの下町を急ぎ足で歩く初老の女性。フランスパンの突き出した大きなバッグを手にアパートの狭い階段をのぼり始めるが、肥満気味で荒い息からかなり体調が悪そうである。すれ違う各階の住民から「こんにちは、マダム・ローザ」と声をかけられながら最上階にたどり着くと、小さな子供たちが駆け寄ってくる。ローザは近所の娼婦の子供たちをあずかって、生計を立てているのだ。

 

 最年長のモハメッドは孤児で、普通の学校には行っていないがコーランの勉強は続ける賢い子である。そろそろむずかしい年齢でもあるが、体調が段々と悪化するローザを手助けし、周囲からはモモという呼び名で親しまれている。

 

 ローザと子供たちの共同生活は、実は切羽詰まっていた。ローザの体力では子供たちの面倒が見切れなくなってきたのだ。あちこちの人々に頼んで、子供たちを一人ずつあずけていく。アフリカ系の子供はアルジェリア人の知り合いに、ユダヤ人の子供はユダヤ系の家庭に。段々と子供が去っていくにつれて、家計もきびしくなる。モモはローザと一緒にいたいので、大道芸人の真似をやったり、万引きをしたり。

 

 だが、ローザの病状は悪化し、たびたび発作を起こすようになる。医者は入院を勧めるのだが、彼女はユダヤ人収容所の記憶が蘇り、入院だけはしないと頑なになる。

 

 そんなある日、「ローザが長くないという噂を聞いたので......」と見知らぬ男がやって来る。遥か以前に預けたモハメッドという子供に会いたいというのだ。彼は11年前に妻を殺害し、精神病院に収容されたため子供の面倒を見ることができなかったが、今は退院しているので連れて帰るという。話を聞いていたローザはモモの隣にいたキッパを被っている少年、モイシェを指して「この子よ」と答える。驚いている男に「実はね、同じ日に2人の子供を預かったので間違えちゃったのね。バル・ミツヴァーもちゃんとやったしとてもいいユダヤ人の子供に育ってるわよ」と続けるローザ。モモもモイシェも状況をとっさに判断し、芝居に付き合っている。「ユダヤ人じゃなくてアラブ人の息子を出してくれ」とべそをかく男に、「うちにはアラブだとかユダヤ人国家とかってものは存在しないのよ。あなたの息子を連れて帰りたいのなら、この子供を連れて行きなさい」という。男はショックのあまり倒れてしまう。

 

 秘密の隠れ場所で、7本のロウソクを灯しながら死ぬことを願う彼女を見て、モモは決断をする。入院させようとする周囲に「実はローザにはイスラエルに裕福な親戚がいて、迎えに来ることになったんだ」と嘘をつき、隠れ家で彼女の最期を看取る。この少年がテープレコーダーの前でローザと自分のことを語る場面が後半に2回出てくるが、フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』を何となく思い出してしまった。

 

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小説の日本語訳はこちら(ロマン・ガリではなくエミール・アジャールという筆名になっている)