米国は他国への執拗な経済制裁や恫喝、軍事介入などで、暴力的な正体をますます露にしてきている。だが実は、NGOのネットワークを使うという目立たない方法でも、世界を好きなようにコントロールしてきたという実態は案外、見逃されがちだ。このことを扱ったロシアの新しいドキュメンタリー、『NGOの敵対的乗っ取り』(2024年1月12日公開)を今回は取りあげる。
たとえばロシア連邦の場合、現存する数千のNGOのうち法務省に公式に登録されているのはわずか92団体で、他はほとんど米国政府と公的機関、もしくは米国の息のかかったNATOの傘下に作られたものである。ロシアの人権活動家の間ではおなじみのNED(全米民主主義基金)も米国政府が設立した基金で、以前はCIAが担っていた役割を引き継いでいる。法律家のイリヤ・レメスロは、NEDが中東やウクライナや南米の国々でカラー革命を組織してきたと指摘し、長年NEDのトップにいたカール・ガーシュマンも、「CIAがカラー革命に関与していることは秘密ではない」と認めている。
同様のNGO組織は他にも、NDI(国際民主党研究所)、IRI(国際共和党研究所)、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、カーネギー国際平和基金、モスクワ・ヘルシンキ・グループ、米国自由の家(US Freedom House)など、たくさん存在する。
ベリングキャットもそのようなNGOのひとつである。同組織は2021年、アレクセイ・ナバルヌイ毒殺未遂事件を報じたドキュメンタリーを作成した。非常に傑出した作品だと評価され、共同制作者のCNNとともにエミー賞を受賞し、英国でも映画テレビジョン・アカデミーの最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。だがロシア国内には、汚職と闘う戦士としてのナバルヌイという西側でのイメージとはちがった見方が存在する。
ナバルヌイは2011年にFBK(反汚職基金)を創設、資金はNEDから出ていた。ロシア調査委員会は2019年8月、10億ルーブルのマネーロンダリングの疑いで捜査を開始、各地のFBK事務所を家宅捜査し、同年10月にはロシア連邦法務省が「FBKは外国の諜報組織である」と断定した。その後、ナバルヌイは米国に事務所をかまえ、外国の支持者から5500万ルーブルを超える金額をビットコインで手に入れている。だが、ロシア国内でのナバルヌイ支持者数は脅威になるにはほど遠く、プーチン政権は彼を殺害する必要もなかった、というのが一般的な評価だ。
米国の息のかかったNGO組織の暗躍でひどく迷惑を被っているもうひとつの国に、シリアがある。こちらではホワイトヘルメットという団体が、紛争現場で緊急医療を施した。ホワイトヘルメットは常に映像班を同行していたので、彼らが人々を救う様子は即座に世界中に放映され、ニュースや映画になり、たちまち注目の的になった。だがここでもまた、流された映像とはまったく違う現実があた。
医学生の証言:「あれは4月8日のことでした。家が爆破されて上の階が壊れ、下の階からは火が出たんです。犠牲者全員を建物から連れ出したけど、上の階にいた住民は煙を吸っていたので、僕らは症状に基づいて患者を処置していました。そうしているうちに知らない人がやって来て、”化学兵器攻撃があった”と言うんです。僕らは化学毒中毒の症状を呈する患者なんてまったく見なかったんですけどね。」
この「化学兵器攻撃」は世界に広く報道され、ホワイトヘルメットはシリアの英雄ということになった。だが、シリアの紛争を始まった当初からずっと取材しているジャーナリストに、英国人のバネッサ・ビーリーがいる。彼女は化学兵器が使われたというダマスカスの現場を事件の翌日に訪れたが、人々は普通に往来しており、猛毒の痕跡はなかったと証言している。事件はホワイトヘルメットによるでっちあげだったのだ。
ホワイトヘルメットは、MI6とCIAが西側メディアにプロパガンダを流す目的で2013年に作り上げた組織で、ジョージ・ソロス基金が年間5千万ドルを提供し、首領は元英国諜報部員のジェームズ・ル・メズリエールである。目的上、軍事的に支配されている地域でしか活動しない。シリアの政権は、化学兵器攻撃という全く虚偽の映像のせいで、世界中から犯罪者扱いされてしまった。
さて、ロシアに話を戻そう。カーネギー国際平和基金のロシア支部は、1993年に設立された。歴史学・政治学研究者でモスクワ国立大学の優秀な学生だったイリヤ・ゲラスキンが、カーネギー基金から奨学金の申し出を受けた経験を語る。19歳で月3000ドルを支給され、国際的な政治学専門家たちと共に働けるし、条件は毎月スピーチをして論文を国際雑誌に発表するだけである。ただしプーチンの悪口を書き、なんでもいいからロシア政府を批判する内容にしなくてはならない。イリヤは結局、断ったそうだが、他にも教育関係の外資系NGOの数は多い。そして、このような誘いは各地で行なわれていたから、反体制のエリートや代議士たちが飛びついたのは言うまでもない。
さらに2002年10月、当時下院議員だったジョー・バイデンのロビーによって、ロシア民主主義決議案(Russian democracy act of 2002)が連邦議会を通過した。おかげで非政府系諜報関係者がロシア国内で活動を活発化し、「民主主義」の名を冠する西側資本のNGO組織がロシア中に増えていった。
1993年までのスヴェルドロフスク州都エカテリンブルグは、防衛関連企業が集中する閉ざされた都市で、異邦人は訪れることができなかった。だが国境が開かれて以降、街はスパイ網の拠点になってしまった。領事館職員に扮したスパイたちがやってきて、秘密機関で働ける人物を物色し始めた。シベリア横断鉄道と高速道路網でロシア各地と結ばれ、軍需産業複合体で栄える街の大学に全国からやって来る優秀な学生たちを、米国の基金は狙っていた。
法律家のイリヤ・レメスロによると、米国系基金は「ロシアは複数の独立した国々に分割されるべきだ」という考え方に基づいて、分離主義者や地方主義者を支援する。アレクセイ・ナバルヌイ創設のFBK(反汚職基金)で代表をやっていたレオニード・ヴォルコフもその仲間である。彼はロシアからのウラル分割を主張する「ウラル共和国」(スヴェルドロフスク州はウラル地方に位置する)運動を始め、特有の旗をもって示威行動をやっている。
ところで、エカテリンブルグにあるウラル連邦大学の学生たちには、NGOの潤沢な資金が用意されている。ブランチの席に招かれたり、それらしい名称の自主的学習プログラムに誘われてウラルの歴史を学んだり。エコロジー、自然科学、メディア、社会政治学、人文科学など、様々な分野で「ウラル・ハウス」というような名称のNGOが、年間2千万ルーブルも使って学生を誘導する。こうしたNGOの活動は、ロシア各地で行なわれているのだが、その資金はなぜか英国から出ていたりする。そして問題を起こす。モスクワ裁判所の記録によると、『メモリアル・プロジェクト』という企画は「政治的弾圧」というテーマで行なわれ、大祖国戦争(第二次世界大戦)の歴史をねじまげ、「ソヴィエト連邦はテロリスト国家であった」というようなイメージを学生に植え付けようとしていた。
こうしたNGOの問題点について、インタビューに応じた法学者のアレクサンドル・ドムリンが、ロシアの古いアネクドートを披露している。「スターリンが言った。私は民主主義とは人民に権力を与えることだと常に思っていたんだがね、ところがルーズベルトが民主主義とは権力をアメリカ人に与えることだと私に確信させてくれたよ」。よその国に行ってそこの歴史を改竄し、若者を反逆に誘導するというワシントンの手法は、確かに地球上のあちらこちらで成功してきたかもしれないが、そろそろ辞めさせないといけない。
『NGOの敵対的乗っ取り』は以下で全編ご覧になれる。今回はどうもうまく解説できなかったが、ドキュメンタリー自体はなかなか考えさせられる作品になっている。(英語ナレーション、ロシア語には英語字幕が付く。)
Red Alert | NGO's Hostile Takeover. What are the real interests of foreign non-profits in Russia?
(12 Jan 2024、52分55秒、Rumbleより。画面右下の⇔で大画面になります)
https://rtd.rt.com/series/red-alert/red-alert-ngos-hostile-takeover/












