
1946年、GHQは占領政策の一環である民主化を促進するために、皇居前広場での第17回統一メーデー開催を許可した。この短編記録映画は、当時の様子を米国空軍配属のカメラマンが撮影したものである。戦争が終わってまだ一年、平和な生活と繁栄を求めて立ち上がる人々の表情は意外に明るく、希望に満ちている。また、様々な人がデモに参加する中、釈放されたばかりの政治家たちが力強く演説する様子を、カラーでとらえたカメラマンの腕は確かだ。最後のほうには、衆議院議員選挙に初めて投票する女性有権者の姿も写っている。

1946年、GHQは占領政策の一環である民主化を促進するために、皇居前広場での第17回統一メーデー開催を許可した。この短編記録映画は、当時の様子を米国空軍配属のカメラマンが撮影したものである。戦争が終わってまだ一年、平和な生活と繁栄を求めて立ち上がる人々の表情は意外に明るく、希望に満ちている。また、様々な人がデモに参加する中、釈放されたばかりの政治家たちが力強く演説する様子を、カラーでとらえたカメラマンの腕は確かだ。最後のほうには、衆議院議員選挙に初めて投票する女性有権者の姿も写っている。
1992年2月17日、マリオ・キエーザというミラノの実業家が収賄の現行犯で逮捕された。いきさつはこうだ。キエーザはバギーナ(★記事末尾を参照)というケアハウスを経営していたが、地域の小さな清掃会社と契約をかわした際、社長のルカ・マンニに手数料として5%を要求する。一旦は承諾したものの、キエーザの要求額がどんどん上がっていくことに困りはてたマンニは、ミラノ地方検事のアントニオ・ディ・ピエトロに相談する。ディ・ピエトロはマンニ同意のうえ、現金の入ったブリーフケースに隠しマイクを仕掛ける。こうしてキエーザは、700万リラ(当時の日本円換算で約73万円)の賄賂を受け取った現場を押さえられた(注1)。
実はキエーザは、イタリア社会党(PSI)書記長であるベティーノ・クラクシの秘書をやっていた。当時、政治家への賄賂は広く行なわれていたため、キエーザの供述を手がかりに他の議員たちも次々と逮捕されることになる。俗に「タンジェントポリ」(汚職の街)と呼ばれたこの悪しき慣習に対する一連の摘発は、「マニ・プリーテ」(汚れてない手)と名付けられた。捜査の手はまたたく間に全国におよび、5000人が取調べを受け、500人の元国会議員が巻き込まれ、多くが逮捕されたり自殺に追い込まれたりした。判事の殺害事件も起こっている。
2004年に制作されたドキュメンタリー、『マニ・プリーテ』(Mani Pulite)では、監督のアンドレア・パムパラーナ(Andrea Pamparana)が当時を知る政治家や検事、メディア関係者などに幅広くインタビューし、キリスト教民主党やイタリア社会党が解党して第2共和政へと移行していく経過を検証しながら、その今日的意味を問う。全編に流れるヘクター・ユリシーズ・パッサレラ(Hector Ulises Passarella)のバンドネオン演奏も、なかなか心地よい。
(注1)逮捕時に使われたブリーフケースは2007年のチャリティー・オークションにかけられ、市長が5000ユーロで競り落としたという後日談がある。
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(注1)ルイジ・コメンチーニが3年後に監督した『ブーベの恋人』は、日本でも繰り返し上映されている。
続きを読むミュンヘンの市立公文書館にカメラが入る。そこにはナチスドイツにおける大量殺人犯で、アイヒマンの共犯者でもあるフランツ・ヨゼフ・フーバー(Franz Joseph Huber)の名前が記録されている。だがこの人物についての詳細は、戦後史からほぼ抹殺されてきた。番組のナレーターは、「この報告はあまりにも衝撃的なので、私たちはひとつの番組にすることにしました。過去の収容所の責任者が戦後、私たちの街でその正体をあばかれることなく普通に暮らしていたのです」、と紹介している。
アイヒマンがエルサレムで公開裁判の後に処刑されたのと対照的に、フーバーは戦後もミュンヘンで罪に問われることなく、実名で普通に暮らし、生涯を終えた。これは、なぜそのようなことが起きたのかを追う最新のドキュメンタリーである。『Eichmann und sein geheimer Komplize』というタイトルで、4月7日よりARDのインターネット・サイトで放映されている。
続きを読む 冒頭からヨハン・シュトラウスのワルツ、『芸術家の生活』のお金持ちっぽい優雅な響きにのって、BBCらしい模範的なクィーンズ・イングリッシュのナレーションが始まる。といっても声の主はコメディアンのスティーブン・マンガン(Stephen Mangan)なのだが。
貴方のためにこの映画を作りました。そう、若い銀行家のあなた。もうお気づきかと思いますが、今日日、芸術市場はなかなかおいしいのです。株や複雑な投資商品よりも優良だ。なぜなら芸術作品の価格は10年前の倍、いや場合によっては20倍もに跳ね上がっていますからね。それにしてもロンドンの銀行家は幸運だ。だって目の前に世界有数のオークション会場があるじゃないですか。

フリッツ・バウアーといえば、アイヒマンを追い詰めた男というイメージがどうしても先行する。だが、彼が検事として成し遂げた偉業はもっと広範にわたる。まず、野放しになっていたナチスの残党を法廷に引きずり出し、アウシュビッツ裁判によってホロコーストの実態を国民に知らしめ、若い世代に働きかけて人間としての正しい道を指し示した。この優れたユダヤ系ドイツ人についてはドラマ映画、ドキュメンタリーともに複数本あるが、その中からキャサリン・バーンスタイン監督の最新ドキュメンタリー、『フリッツ・バウアー:ナチズム
vs. 検事』(注1)を取り上げる。
この作品は2018年にフランスで制作された。フランス語の原題は”Fritz Bauer : un procureur contre le nazisme”だが、ドイツ語版のタイトルは”Fritz bauer : Generalstaatanwalt.
Nazi-Jäger” 。バプティステ・ティリ(Baptiste Thiry)のテーマ音楽が印象的で、音楽だけの市販もされている。

『都市を動かす手』(Le Mani Sulla Citta/Hands over the City)は、実際にあったナポリ市議会と不動産投資家の癒着関係を題材に、政治の腐敗が都市の姿を変えてしまう様を描いた社会派ドラマである。監督のフランチェスコ・ロージ(注1)はハリウッドの名悪役、ロッド・スタイガーを主役に抜擢し、利権と汚職にまみれた政治家をリアルに描くことに成功している。またこの作品には、本物の市議会議員が脇役やエキストラで多数出演しているという驚くべき仕掛けもある。監督がナポリ出身だったからこそできた芸当なのだろうが、なかなか食えないことをやる人だ。
「父と叔父が殺された1937年6月9日、僕は生後40日目だった」、と語るのはカルロ・ロッセッリ(1899-1937)の息子、アンドリューである。ロッセッリはファシストとペンで戦った自由社会主義提唱者で、亡命先のフランスで弟のネッロ・ロッセッリ(1900-1937)とともに惨殺された。TV映画『ロッセッリ事件:ある政権の犯罪』(Il Caso Rosselli=Un Delitto Di Regime, 2007)は、反ファシスト運動に殉じたカルロとネッロの冒険に満ちた軌跡をアンドリューとともにたどることによって、ムッソリーニとファシストの蛮行を検証し、その戦後社会への余波を見極める胸を打つドキュメンタリーである。
久しぶりに『ボストン・リーガル』を取りあげる。2008年米国大統領選の最中に放映されたシーズン4エピソード18で、二大政党制による選挙がかかえる問題点を指摘している。
予備選進行中のある日、アラン・ショアの上司、シュミット(キャンデス・バーゲン)が突然、「甥のミッチーを訴えたい」と泣きついてきた。理由はこうだ。ミッチーはマサチューセッツ州のある選挙区で民主党予備選挙の誓約代理人をやっている。予備選ではヒラリー・クリントンが選ばれたのだが、ミッチーはバラク・オバマのほうが良いと信じており、選挙区民を裏切ってでもオバマに投票すると言い始めた。シュミットはこれを止めるべく、アランに法廷での弁護を依頼したわけだ。そこでアランが選んだ戦術は、民主党を訴えるという奇策だった。

2008年ワシントン州予備選挙の様子(Joe Mabel, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons)
今から31年前、1989年のちょうど今ごろ、東ドイツは大揺れに揺れていた。ハンガリー国境から西側に脱出する市民は後を絶たず、ライプチヒの月曜デモは天安門事件に触発されたこともあって、参加者が増え続けていた。この動きを封じ込めるため、東ドイツ国家評議会議長のエーリッヒ・ホーネッカー(1912-1994)は軍隊を出動させ、群衆に銃を向けようとする。本来はかなり重たい歴史上の事件なのだが、喜劇映画『前進あるのみ!』(Vorwärts immer!、2017)では偽ホーネッカーが登場し、デモに参加した娘を助けるためにシュタージや政府の要人をふりまわしたあげく、ついには軍隊を止めてしまう。偽ホーネッカーを演じるヨルグ・シュッタウフ(Jörg Schüttauf)の渾身の演技、特に言い回しが面白く、脇役の偽エゴン・クレンツもかなり笑える。そしてかわいい娘とその仲間、登場する間抜けなシュタージのドタバタは、安心して鑑賞できるお茶の間喜劇風に仕上がっており、日本にいながらドイツ人のお笑いをおおいに楽しめる。
内容を紹介する前に、このドキュメンタリーはユーチューブ上で公開されていて誰でも無料で鑑賞できるが、それを妨害する動きがあるということに触れておく。9月7日、ダントツの調査報道で一目おかれているマックス・ブルメンタール率いるウェブサイト、《グレイゾーン》(The Grayzone)がこのドキュメンタリーについての長文記事を掲載した。クリーン・エネルギー産業に大資本が群がっていることを指摘したこの作品が、ユーチューブから引きずり降ろされようとしている、という内容だ。これを読むまで制作者のマイケル・ムーアは何が起こっているのかまったく知らなかったらしく、The Hillというインターネットニュースの番組インタビュー(Rising)で、以下のように述べている。
すごい記事だ。僕たちが尊敬している億万長者たちが環境保護運動を牛耳ろうとしていることを映画の中で指摘されたからといって、そして環境保護運動のリーダーたちがそれに乗っかっていることを指摘されたからといって、彼らが9000語の調査書を作成してユーチューブからこの映画を排斥しようとしているなんてね。このドキュメンタリーはすでにユーチューブで900万人が視聴していたんだけど、(この事件の)おかげで他のサイトも含めて1200万人になっちゃった。そしてさらに多くの人が観るようになったよ。

(風力発電の画像。紹介している映画からのものではありません)
WHO(世界保健機関)の新型コロナウイルス対策が、毎日のように流れてくる。感染症についての知識がない私などは、とりあえずWHO事務局長の発表を聞いて、「ふうん、長引くのか」と自分にできる対策を考えるしかない。だが実態を知らない組織の言うことを無原則に信じるのは、不安が残る。そこでWHOの内実に迫るドキュメンタリー、『TrustWHO』(”WHOを信じなさい/信じるって誰を”、2016年ドイツ作品)を鑑賞した。監督はリリアン・フランク(Lilian Franck)とトーマス・シュロッツマン(Thomas Schlottman)。映画冒頭でインタビューに応じた市民が、「フクシマの事故以来、政府や高位高官による隠蔽というものがあるってことは皆わかっていて、WHOもその一味なのね」、と日本人にとってはインパクトのある発言をしている。
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TVドキュメンタリー、『ゴヤという天才的な狂気』(”Goya: Mad like a Genius”、2002年英国)は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてスペインで活躍した大物画家、フランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco Goya, 1746-1828)の多様な作品群と数奇な運命の謎にせまる。プレゼンターには正統派として評価の高かった雄弁な美術批評家、ロバート・ヒューズ(Robert Hughes, 1938-2012)を迎え、ひとりの天才画家の頂点と奈落を、見ごたえのある人物伝に仕上げている。画家の深層に切り込もうとするヒューズの執拗さと、それでいて鑑賞者に距離を感じさせない饒舌がなかなか面白い。さらに、レオン・ゴルブ(Leon Golub)という泣く子も黙る鬼才画家を登場させ、解釈にひねりを加えているところも興味深い。
『ゴヤ自画像』(1815)
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