ヨハンナ比較文化研究所
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読書の風景2026:モデルとしての家族

 この夏は昨年に引き続いて読書に関する絵画作品をかき集め、2026年カレンダーでどれを紹介しようかとむずかしい選択をしていた。多くの画家が、さまざまな「読む」場面を、それぞれの手法でカンバスに投影している。今日は、その中でひとつのグループを形成する「読み物をする家族の図」について、少し触れてみる。

 たとえばアンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Fantin-Latour)の1877年作品、「読書」。本を読んでいるのは妻のヴィクトリア、聴いているのはその妹のシャルロットである。実は同じ題材の1870年作品があるのだが、比べてみると画面から余計な情報が捨象され、静かな画面に内面的な深みが緊張感をともなって表れているのがわかる。

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読書(1877) アンリ・ファンタン=ラトゥール

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読書(1870)アンリ・ファンタン=ラトゥール

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ロシア・アヴァンギャルドを牽引した画家:アリスタルフ・レントゥロフ

 アリスタルフ・ヴァシリエヴィチ・レントゥロフ(Аристарх Васильевич Лентулов, 1882-1943)はロシア・アヴァンギャルドの重要な画家で、パリでフォービズムやキュビズムの影響を受けた後、帰国して立体未来主義(Cubo-Futurism) を牽引する。大柄で人好きのする朗らかな性格だったそうで、周囲にはいつも多くの仲間が集っていた。文献には「太陽の画家」と呼ばれていたという記述もある。  

 レントゥロフは1882年、ベンザ州の司祭の家に生まれた。父が早逝したため、その職を継ぐべく宗教学校や神学校に入学させられる。だが本人は美術に興味を示し、ベンザ美術大学、キエフ美術学校で学んだ。さらにサンクトペテルブルクでは、非正規招待のかたちで芸術アカデミーの授業に参加する。ロシアにおけるアヴァンギャルド展のはしりである『花輪』に作品を出品した後、1908年にモスクワに移住。そこで結婚したマリアは生涯の良き伴侶となった。

 下はマリアを描いた1913年の作品。1911年から12年までのパリ滞在後の作品で、フォービズムやポスト印象派の影響が見られる。(すべての画像はクリックで拡大してご覧になれます。)
Портрет_Марины_Петровны_Лентуловой

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2025年秋のお薦め図書

(1) クレムリンの5000日:プリマコフ政治外交秘録
エヴゲニー・プリマコフ著、鈴木康雄訳
NTT出版2002年発行 本体3,500円+税
 プリマコフ(Евгений Примаков) は元々はジャーナリストだったが、ゴルバチョフおよびエリツィンの時代に外交官や首相としてクレムリンの政治に深く関与する。ソ連、ロシアの政権内部だけではなく、地球規模の外交がどういうふうに運ぶのかを理解できる貴重な手記である。現在のモスクワ対ワシントンの駆け引きを見るためにも参考になる。
クレムリンの5000日: プリマコフ政治外交秘録
エヴゲニー プリマコフ
エヌティティ出版
2002-03-01


(2) 戦争広告代理店
高木徹著
講談社2005年発行 本体619円(税別)
 ボスニア紛争で、米国の広告代理店が作り上げた「セルビア人=加害者」という善玉悪玉作戦が、ユーゴスラビアの運命を決定し、NATO軍の空爆につながっていく。PRに莫大な費用と労力をかけ、強引に「真実のイメージ」を造り上げたものが勝利するという現代政治の怖ろしさを、著者は緻密かつ的確に取材している。


(3) 上海時代:ジャーナリストの回想(上・中・下)
松本重治著
中公文庫 1989年発行 各540円から560円
 昔のジャーナリストのインテリ度はすごかった。1899年生まれの松本重治は日本新聞聯合社上海支局長になり、日中戦争をなんとか回避しようと奔走する両国の人物と交流し続ける。読みながら実らなかった努力の跡を考える。



(4) 後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ
ペーター・ヴォールレーベン著、本田雅也訳
早河書房 2021年発行 本体900円+税
 動物に恥じらいや後悔はあるのだろうか、利他主義の行動をとることがあるのだろうか、下心はあるのだろうか、など意表をつく疑問に答えを見つける観察記録。自然や共生する動物たちの姿を伝えるベストセラー作家、ヴォールレーベン(Peter Wohlleben)の楽しく読めて、人間社会についても考えさせられる良書。



☟ドイツ語原本はこちら



ウインズロウ・ホーマー(Winslow Homer):奴隷解放宣言直後のアメリカを描く

 米国の画家、ウィンズロウ・ホーマー(1836-1910)は、奴隷解放宣言直後の労働者や児童の姿をとらえた作品を数多く残したことでよく知られている。南北戦争に北軍側雑誌画家として従軍し、その後は田園や港で働く人々と子供たちを描き続けた。非常に多作な画家で、特に海や帆船を描いた作品群が有名だが、解放後のアフリカ系アメリカ人の日常を大きなテーマとしてとらえた作品も重要で、見ごたえがある。(以下に掲載した絵画はクリックして拡大画面でご覧ください。)

Market_Scene_Nassau_by_Winslow_Homer_1885
ナッソーの水上市場(1885)

Winslow_Homer_-_Dressing_for_the_Carnival
カーニバルの装束(1877)

 上の作品はアフリカン・アメリカンの間で恒例の仮面舞踏祭、ジャンカヌー(Junkanoo)を描いた1877年の油絵である。右下の少年が星条旗を握っているのは、このお祭りが7月4日に重ねて開催されていたかららしい。子供たちの姿から、奴隷解放宣言から15年ほどたつにもかかわらず、生活は楽ではなかったことがうかがえる。

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ミケランジェロ:デッサンかき集め70点 (高画質)

 8月1日新刊発売の美術書、『ミケランジェロ素描集』を作成するにあたって確認したミケランジェロ・ブオナローティのデッサンから大量70点(順不同)をかき集めて動画を作成しましたので、お楽しみください。


(画面右下の▢で大画面になります。同じく⚙マークで高画質1080pHDを選択してください。)

新刊書『ミケランジェロ素描集』(A4判カラー32頁)はこちらで購入できます。

ミケランジェロ素描集
ミケランジェロ・ブオナローティ
ヨハンナ比較文化研究所
2025-08-01



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新刊『ミケランジェロ素描集』まもなく発売

 ミケランジェロ・ブオナローティ(Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni, 1475-1564)は、フィレンツェ共和国カプレーゼに生まれた。大理石採石場を経営する父の元で育ち、10歳代前半にすでに際立った画才を発揮していたミケランジェロが、成人してルネッサンス芸術を牽引する彫刻家として活躍することになるのは、無理のない成り行きだった。パトロンであったメディチ家の興隆と没落、ローマ教皇庁の庇護と代替わりなど紆余曲折があったにもかかわらず、突出した才能のおかげで大作の依頼が止むことはなかった。現存する作品群も『ダビデ像』や『ピエタ』、システィナ礼拝堂天井画および壁画、各地の礼拝堂建築など、どれもが傑作とされる。


  今回はそんなミケランジェロの素描群から、特徴的なものを選び、『ミケランジェロ素描集』(A4判全カラー・32頁)にまとめてみた。その編集作業で多数の素描を眺めるうちに、職人として黙々と作業を続けるミケランジェロの姿が浮かび上がってくる。


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読書の風景:画家が繰り返し描いてきた静かな日常

 長くて厳しい夏がなかなか終わりそうになかった今年、静かに読書できる秋がとても恋しく、「よ~し、2025年用カレンダーは『読書』をテーマに制作しよう」と考えた。さて関連する絵画を調べ始めたところ、数えきれないほど膨大な数の作品が後から後から現れてくる。「読む」という行為は読書以外に「手紙を読む、新聞を読む、看板を読む、能書きを読む」など、私たちの日常のなかで非常に重要な位置を占めているので、関連する作品数も非常に多いのだ。結局、情報の山に埋もれながらの大変楽しいカレンダー制作作業となった。読書愛好家の方々にも楽しんでほしいと思い、80点近くの作品を選んで短い動画を作ったので。最後に紹介する。


 さて、「読む」ことを描いた作品にはいかに多くの情報が詰まっているか、という例を以下に挙げてみようと思う。次の作品は、カレンダーには載せられなかった『訪問客』(1850年作品)という小品である。画面をクリックすると大きくなる。


a visitor Spitzweg

『訪問客』(1850年、カール・シュピッツヴェーク)


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テネブリズム(Tenebrism、明暗対比画法)

 テネブリズムはロウソクなど単一の光源を使い、明暗のコントラストで主題を浮かび上がらせる画法。流派や様式を分類する概念ではないが、17世紀のイタリアやオランダで多くの画家に用いられた。代表的な作家としてカラヴァッジョやレンブラントが挙げられ、他にもこの技法を駆使した画家は地域や時代をこえて散在する。

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『愉快な仲間』、1623年、ヘラルト・ファン・ホントホルスト作


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昭和初期の新聞はこうやって作られていた。溝口健二宣伝フィルム『朝日は輝く』

 溝口健二は1929年、大阪朝日新聞社からの依頼を受けて創立50周年記念無声映画『朝日は輝く』を監督作成した。一見ドキュメンタリー風だが、実は脚本・俳優を使った宣伝用創作映画で、太秦で撮影されたモキュメンタリ―である。とはいえ大阪朝日新聞社印刷所の実写も大胆に挿入され、当時の輪転機や鋳型活字、植字工の働きぶりなど、非常に興味深い映像となっている。 残念なことに作品の大半は紛失してしまい、現存する25分ほどの無音リール画像は決して鮮明とはいえないが、貴重な映像資料として取りあげることにした。以下に紹介するのは作品の一部分で、背景音楽は弊研究所が加えたものである。

  スピード感あふれる迫力満点の画面からは、無声でもここまで魅せる溝口の底力を目の当たりにできる。1929年当時の映画製作水準はなかなか高かったのだ。また、「エイゼンシュテインを見ていたのか」と思わせるようなカメラワークもあるが、『戦艦ポチョムキン』等の作品は日本では1950年代まで封殺されていたそうだから、溝口は見ていなかったはずだ。その辺りの事情は研究者のほうが詳しいだろう。

原作:大阪朝日新聞

監督伊奈精一溝口健二

脚本木村千疋男

撮影:横田達之対島寅雄

出演者中野英治村田宏寿沢蘭子斎藤紫香

(他に土井平太郎入江たか子などの出演記録が残っているが今回抜粋した部分には登場していないと思われる)

 

 なお、この作品の今回取りあげなかった部分には、大陸に拡大していく日本の物資輸送の実写もふくまれている。日活の資料によると元作品は77分だそうで、現存しないのがまことに残念である。

 
👇溝口健二
『朝日は輝く』より抜粋👇
(モノクロ無声・背景音楽は付加)
 
昭和初期の新聞はこうやって作られていた。溝口健二監督宣伝フィルム、『朝日は輝く』。 (29 Jun 2024、13分31秒、YouTubeより。画面右下の▢で大画面になります)


『これからの人生』(1977年仏映画)忘れられた名作

 『これからの人生』(La Vie devant soi, Madam Rosa, 1977, 仏作品, Moshè Mizrahi監督)は、ロマン・ガリ(筆名エミール・アジャール)の同名小説(La Vie devant soi, 1975)の映画化。ホロコーストを生き延びた初老の女性とアラブ系少年の愛情を描き、アカデミー賞外国映画部門賞を受賞した。古い映画だが往年の大女優、シモーヌ・シニョレの圧倒的な存在感が見どころである。また、2020年にはソフィア・ローレン主演でリメイクされ、Netflixで公開されている。


Montand-Signoret-Rome-1958
往年のシモーヌ・シニョレ。夫のイブ・モンタンと共に

 

 パリの下町を急ぎ足で歩く初老の女性。フランスパンの突き出した大きなバッグを手にアパートの狭い階段をのぼり始めるが、肥満気味で荒い息からかなり体調が悪そうである。すれ違う各階の住民から「こんにちは、マダム・ローザ」と声をかけられながら最上階にたどり着くと、小さな子供たちが駆け寄ってくる。ローザは近所の娼婦の子供たちをあずかって、生計を立てているのだ。

 

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ドキュメンタリー『NGOの敵対的乗っ取り』:ロシア内反体制を育てる西側組織の実態

 米国は他国への執拗な経済制裁や恫喝、軍事介入などで、暴力的な正体をますます露にしてきている。だが実は、NGOのネットワークを使うという目立たない方法でも、世界を好きなようにコントロールしてきたという実態は案外、見逃されがちだ。このことを扱ったロシアの新しいドキュメンタリー、『NGOの敵対的乗っ取り』(2024年1月12日公開)を今回は取りあげる。

 

 たとえばロシア連邦の場合、現存する数千のNGOのうち法務省に公式に登録されているのはわずか92団体で、他はほとんど米国政府と公的機関、もしくは米国の息のかかったNATOの傘下に作られたものである。ロシアの人権活動家の間ではおなじみのNED(全米民主主義基金)も米国政府が設立した基金で、以前はCIAが担っていた役割を引き継いでいる。法律家のイリヤ・レメスロは、NED中東やウクライナや南米の国々でカラー革命を組織してきたと指摘し、長年NEDのトップにいたカール・ガーシュマンも、「CIAがカラー革命に関与していることは秘密ではない」と認めている。

 

 同様のNGO組織は他にも、NDI(国際民主党研究所)、IRI(国際共和党研究所)、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、カーネギー国際平和基金、モスクワ・ヘルシンキ・グループ、米国自由の家(US Freedom House)など、たくさん存在する。

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芸術家たちの闇:クラシック音楽の場合

 以下に並ぶ記事は、クラシック音楽の世界で生じた不祥事の数々である。どれも非常に深刻な事件なのになぜか世間は忘れたがるので、備忘録として載せておく。主観的な注釈は避けるが、若い音大生たちは身の回りに腑に落ちないことが起こったら、必ず友人や信頼できる大人に相談すること。たいていのケースに余罪がある。


行動支配と感情的な虐待:クラシック音楽の教授法は壊れているのか?音楽学生が初めて語り始める経験(2023年7月11日、The Standard)

Controlling behaviour, emotional abuse – is classical music teaching broken?

Music students are speaking out about their experiences during their studies, many for the first time



偽終止:元音楽学生がジュリアードの複数の教師を性的非行で告訴 (2022年12月13日、npr, Deceptive Cadence)

Former music students accuse two Juilliard teachers of sexual misconduct



チータム音楽学校の性的虐待取り調べ:「広範囲の虐待」報告が30件以上(2013年5月8日、The Independent)

Chetham music school sex inquiry: More than 30 report 'widespread abuse'

39 teachers from several schools under investigation in relation to sexual abuse allegations



フランシス・アンドラーディ審問:性的虐待事件被害者のバイオリニストは「私が裁判にかけられている気分よ」と夫に語った(2014年7月7日、Manchester Evening News)
(※アンドラーディは権威ある聖歌隊指揮者に性的虐待を受けた過去を告白、裁判に訴えていた最中の2013年1月に自殺した。)

Frances Andrade inquest: I thought I was on trial, tragic Chetham's sex abuse case violinist told husband

Musician had spiralled into 'incredible despair' over court case involving her pervert former music teacher Michael Brewer, hearing is told



『誰がカラヴァッジョを殺したのか?』(2010) BBCドキュメンタリー

 『誰がカラヴァッジョを殺したのか?』は英国で大人気の美術史研究家、アンドリュー・グレアム=ディクソン(Andrew Graham-Dixon)が、ミケランジェロ・メリジ・ダ・カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio, 1571-1610)の死の謎にせまるBBCドキュメンタリー。

 

 グレアム=ディクソンが最初に訪れるのは、カラヴァッジョ最期の場所と言われるトスカーナ州ポルト・エルコーレ(Porto Ercole, Tuscanny)の海岸。1610年7月のある日、39歳の画家は熱射病に倒れ、この砂浜のどこかで死を遂げたと言われている。だが今日にいたるまで葬儀の記録はなく、墓も記念碑もない。若くして名声を欲しいままにしていたカラヴァッジョにしては不自然である。彼は殺されたと推測する研究者も少なくない。

 実はこれをさかのぼること4年、ローマで大画家として活躍していたカラヴァッジョは殺人罪で死刑を宣告され、逃亡してしまう。殺人犯を仇討ちする場合、首は誰がどこで切り落としても合法であったため、カラヴァッジョはまだ統一されていないイタリア各国を放浪し、逃亡生活を続けた。それでも絵を描くことだけは止めなかった。いやむしろ、多くの問題作をものにしている。グレアム=ディクソンは、この壮絶な人生がカラバッジョの絵画に光と影を投影し、西洋美術史上もっとも深淵で胸に迫る精神性をそなえた作品群が生まれたのだと言う。

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新刊美術書『テオドール・ジェリコーの習作』

 テオドール・ジェリコー作の『メデューズ号の筏』は、ルーブル美術館常設展示作品の中でもとても人気があり、いつも人だかりができている。490x716㎝の巨大なキャンバスに描かれ、まことに激しい様相を呈するこの作品の趣向は、「時の政権が隠したい重大事件の記憶を芸術の世界に再現する」という大胆なもので、当時としては常識破りだった。そのため、デビューした1819年のサロンでは賛否の激しい論争が巻き起こり、結局、魂を注いだ油絵はお蔵入りとなってしまった。ルーブルがこの問題作を買い取って展示作品群に付け加えたのは、ジェリコー死後である。このたび弊研究所では、フランスの芸術サロンに逆風を巻き起こしたこの若き才能、ジェリコーの小品を集めた画集、『テオドール・ジェリコーの習作』を出版することとなった。

 

 ジェリコーのデッサンの正確さとすぐれた構図、そして題材をとらえる鋭い視点は突出しており、鬼才として画壇の頂点に君臨することもできたはずなのだが32歳で夭逝してしまったため、完成された作品は非常に少ない。なんとも惜しいので、せめて残された習作群を日本に紹介しようと作業を始めたところ、膨大なデッサンやリトグラフに遭遇することになった。弊研究所で作成できる美術書はささやかなものだが、人生をまっとうできなかった天才画家の息吹きを伝えるべく、ジェリコー的な断片を可能なかぎり取り上げたつもりである。個々の作品については簡単な制作方法と年代以外、細かい解説は加えていないので、鑑賞者は先入観なしにジェリコーと対面し、彼の世界を楽しんでいただきたい。

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『英国の貧困:なぜ何百万の英国人は無一文なのか』2023年ドキュメンタリー

 現在、英国人口の4分の1におよぶ1500万人もの人々が、貧困ライン以下の生活を強いられている。失業率は3.8%という記録的な低さであるにもかかわらず、何百万人もの人々が働く貧困層であり、日々の支払いすらできないという状態なのだ。社会保障制度は崩壊していて、福利厚生はこの10年間で50%も削られている。その結果、社会の不平等は拡大し続けて戦後最大になり、公的援助を失った弱者は文字どおり痩せ衰えて死んでいく。こうした政府の無策を受けて、国中のあちこちに相互援助のコミュニティーが出現し、市民たちが自主的に支えあうようになった。DWDeutsche Welle制作のドキュメンタリー、『英国の貧困:なぜ何百万の英国人は無一文なのか』(Poverty in Britain: Why are millions of Brits so broke、2023年7月放映)は彼らの日常にカメラを持ち込み、感情移入を避けた語り口で淡々と紹介する。スープキッチンがあちこちにでき、心ある市民が支え合って生きる姿は今日の日本とも重なり、観る者に激しく訴えかけてくる。
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David Cameron announces his resignation as Prime Minister in the wake of the UK vote on EU membership. (licensed under the United Kingdom Open Government Licence v3.0ユニバーサル・クレジットを導入したデビッド・キャメロン首相(当時)

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『非常事態シリーズ:ハイブリッド戦争』ロシア包囲網に関するドキュメンタリー

 ロシアのウクライナ特殊作戦は、第二次大戦後における最大の軍事紛争かもしれない。西側諸国はロシアに対して幾重にも制裁を重ね、国際外交や情報戦で徹底的な攻撃を展開している。そのいっぽうでキーウ政権へは何兆ドルもの軍事援助が行なわれ、世界中から傭兵が集められる。西側諸国対ロシアの「第二次冷戦」ともいえるこの争いについて、「西側は前例のない本格的なハイブリッド戦争を仕掛けてきた」とセルゲイ・ラブロフは表明した。RT(ロシア・トゥデイ)の最新ドキュメンタリー、『非常事態シリーズ:ハイブリッド戦争』(Red Alert : Hybrid Warfare, 2023年7月23日公開)は、この複合戦争の全体像にせまろうとする。


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ヴィクトリア・ヌーランドとペトロ・ポロシェンコ 

 

 退役米国海軍大佐で元ヴァージニア州上院議員でもあるリチャード・ブラックは、ヘリコプター操縦士としてヴェトナム戦争を経験した。軍人としての32年の経験と、政治家として20年の経験があるブラックは、対ロシア戦争が長年準備されてきた敵対政策の帰結だという。「これは正にハイブリッド戦争で、ウクライナは間違った方向に誘導されてきた」。では、ハイブリッド戦争とはどのようなものなのか。

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【ウィシュマさん国賠名古屋地裁第2号法廷】
12月から医師等4名証人尋問
■2025年
12月04日(木)14:30~
12月11日(木)14:30~
12月24日(水)10:30~
■2026年
1月14日(水)10:30~
1月28日(水)10:30~
 **************

※対ロシアが上手くいかなくて踵をかえしてベネズエラ。これも事実上失敗で今度はイラン。精神鑑定と24時間カウンセリングが必要な深刻な症状だと思う。

※なるほど。80年前は「現人神」に命を捧げた幼稚な民族が今度は「真のお母様」に骨までしゃぶられたってことか。

※誰かネタニヤフのことを「凡庸な悪」と言う人いる?

※原爆を落とさなくても日本は降伏していたが戦後史も変わっていただろう。まず無条件降伏までの日程が延びてソ連軍が北海道を制圧し場合によっては南進する。戦後処理は日本のどこかで南北にぶった切ってドイツのように分割する形で終結した可能性が高い。その場合、朝鮮半島の分断という悲劇はひょっとしたら免れたかもしれない。どちらにしろ日本はこの戦争で近隣諸国に多大な迷惑をかけた。《続編》もちろんそれでも原爆は落とさない方が良かったに決まっている。我が国は日本連邦共和国と日本民主主義人民共和国の二つに分かれただけだから。バラライカ弾いてカチューシャを歌って結構楽しく暮らせたと思う。

画像は西鶴一代女(1952年東宝:溝口健二監督)のスチールに自動着色+手修正

日独韓伊の米軍基地

《国会オンライン中継録画》
◎衆議院インターネット審議中継

◎参議院インターネット審議中継


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戦争の彼方
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ウィーンへの帰還
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赤いオーケストラ
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革命の内側¥1650(税込)

当研究所制作の美術書

10月1日発売開始
2026年カレンダー:読書の風景¥550(税込)

ミケランジェロ素描集
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テオドール・ジェリコーの習作
¥1650(税込)


モーティマー・メンペス作品選Ⅱ:ブルターニュ
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モーティマー・メンペス作品選:日本と世界と戦争と
¥2530(税込)


ドラクロワ素描集
¥1100(税込)


本を読む
ジャカルタ・メソッド : 反共産主義十字軍と世界をつくりかえた虐殺作戦(ヴィンセント・ベヴィンス著)

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